原作設定(補完)
□その34
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真選組のイメージアップイベントが3日後なのを確認した銀時は、かぶき町をプラプラしてる沖田に声をかけた。
土方の秘密を知るためではなく、どうしたら土方があの苦痛から逃れられるかを探ってみようとしたのだ。
さりげなく聞いたつもりだったのに、沖田には銀時が探りにくるのが分かっていたようだった。
「教えてもいいですよ、土方さんの秘密」
「……え……いや……他の人に知られたくなきゃ人参やれって脅したんだよね?」
「心外でさぁ。脅したんじゃなくて提案しただけですよ。それに俺が勝手に教えたわけじゃなくて、旦那が知りたいって言うんで仕方なく教えるんでさぁ」
「……俺にせいにしようってわけだ」
「旦那のせいでさぁ」
そう言いながら沖田は懐から携帯を取り出して銀時に差し出す。
受け取って開いたはいいけれど、拾った携帯でメールをするぐらいしかしたことがないので、土方の秘密に辿り着くまで時間がかかりそうだ。
「……携帯持ってないから分からないんだけど…………って、ダメな大人を見るような目をするのやめてくんない」
呆れながら沖田は携帯を操作してからソレを画面に出して銀時に戻した。
銀時は画面を食い入るように見つめながら、ボタンを押して次々とソレを確認していく。
どんな反応をするんだろうとワクワクしていた沖田だったが、銀時は首を傾げて言った。
「……なにコレ? なんで俺が写ってんの?」
沖田が画面に出してきたのは画像ファイルらしく、団子を食べてる銀時や、ケーキ屋を外から覗いている銀時や、公園のベンチでだらしなく寝ている銀時が写っていた。
携帯にそんなものが入っているのも分からないが、コレが土方の弱みになる理由も分からない。
そして、分からないという銀時に沖田は驚かされる。
「……旦那……意外と鈍いんですね。あ、それともモテねーと恋愛事には疎くなるんですかねぇ」
「あ? 誰がモテねーんですか。お子様には分からないだろうけど、こう見えても………………恋愛事?」
沖田にバカにされながらも、気になる言葉を言われて銀時は改めて携帯を見た。
土方がそういう意味を持ってこの写真を携帯に収めていたのだとしたら、つまりは写っている自分が好きだということで。
それを自覚したら恥ずかしくて顔が熱くなってしまい、両手で覆って呟く。
「まじでかー」
そんなことは有り得ないと思っていた。
土方を好きだと気付いてからアプローチし続けてきたけれど、頑張ればいつか土方と付き合えるようになるなんて夢のような結末には期待していなかった。
黙っているのも嫌で、嫌われるのも嫌で、付き合えるとは思っていなくて。
そんな微妙で複雑な気持ちでいた銀時なのに、土方が銀時を拒絶しなかったのにはちゃんと理由があったのだ。
土方がコソコソと銀時の写真を隠し撮りしていながら銀時の前では素っ気なくしていることに沖田はドン引きしたものだが、目の前で赤面している銀時にも引けてしまう。
この場にいてもバカップルに中てられて気分悪くなりそうなので退散を決めた。
「じゃあ、これは土方さんに返しておいてくだせぇ。俺は人参を回避できさえすればいいんで、あとは旦那のお好きなように」
そう言って沖田が携帯を置いて姿を消してから、銀時は落ち着くまで15分ほどかかった。
それから改めて携帯の画像を何度も見る。
自分の顔ばかりを眺めてニヤケている姿は滑稽だろうが、土方が何を考えながらこっそり撮影したのかを思ったら笑わずにはいられない。
だから銀時も決心した。
土方が本気で嫌がる人参の着ぐるみを回避する方法は、今自分にしてやれることは1つしかない。
「……ま、仕方ねーよな……うん」
自分に言い聞かせるようにそう言って、銀時は大事に携帯を懐にしまうのだった。
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