原作設定(補完)

□その34
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#337

作成:2018/01/15




年末からずーーーっと忙しい土方は、ようやくラストスパートの書類整理まで辿り着いていた。

隊士たちはなんとか順番に休みを取らせられたのだが、自分は後回しにしてもうひと月近くになろうとしている。

そうは思ってもあまりに疲労感に表情が険しくなってしまい、総悟すらも土方には近付いてこない状態だった。

邪魔が入らないならそれはそれで良いと思っていると、机の上に置いてあった携帯電話が鳴り出す。

"万事屋"と表示されているのを見て、土方は少し力が抜けた。

いつもだったら仕事の邪魔でしかない相手でも、今は声ぐらい聞きたい、そう思ったからだ。

が、電話の向こうから聞えてきた声は想定外の声だった。

「はい」

「あ、土方さんですか? お仕事中すみません。志村新八です」

新八が土方の携帯に電話をしてくるなんて初めてのこと。

銀時と付き合っていることは新八も神楽も承知の上とはいえ、そこまで親しくしてはいなかった。

「……どうした」

「あの、その、まだお仕事忙しいですか?」

「……ああ。もう少しかかるな」

「……そうですか」

途端に新八の声ががっかりしたのが伝わってくる。

そもそもなんの理由も無く土方に電話してくるはずがなく、それを聞かないことには気になって仕方が無い。

「何かあったのか?」

「えっと……銀さんがずっと風邪を引いてまして」

"バカなのに?"というツッコミは敢えてしなかった。

どうりで正月明けまでは毎日あったラブコールが、ここ1週間途絶えていたはずだ。

「……で?」

「風邪が長引いていて不安みたいで……土方さんに会いたいって言うんですよ。ちょっとで良いんでお時間とれませんか?」

「……酷いのか?」

「自分ではそう言ってます。病院ではただの風邪だって言われてるんですけど」

新八の声は本当に心配そうで、土方にもそれが移ってしまう。

仕事で忙しくて会う時間も取れない薄情な恋人を、大人しく待っていてくれる銀時が会いたいと言っている。

まだ仕事は残っているけれど、ちょっと顔を見にいくぐらいの時間が取れないわけじゃない。

「……分かった。何時になるかは分からないが、行けるよう努力してみる」

「ありがとうございます!」

嬉しそうに礼を言って新八からの電話は切れた。

書類はひとまず後回しでも構わないが、近藤が本庁に呼ばれて留守にしているので、それを待たなければならない。

それから、ここ数日部屋に篭もりきりだったので時間節約のために風呂にも入らずじまいにしてしまい、せめて身支度ぐらいはしていきたかった。

銀時に会いに行くのに風呂に入っていくなんて、準備万端のようで気恥ずかしくもある。

が、今回は本当に具合が悪いらしいので、そんなことにはならないだろうと思いながら、土方は再び仕事に集中するのだった。


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