原作設定(補完)

□その34
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#332

作成:2018/01/02




「あけましておめでとうございます」

「今年もよろしくアル」

「…………お、おう、おめでとう……よろしく……」

丁寧に挨拶をする新八と神楽の前で、土方はなんとも気まずい表情で歯切れの悪い返事をする。

元日の早朝、万事屋に泊まった土方は寝坊してしまい、恒道館で年越しを迎え帰ってきた新八たちに起されてしまった。

土方が気まずいのは、今のシチュエーション。

銀時と二人でぐーぐー寝込んでいたところに押しかけられたものだから、狭い布団で裸でくっついていた姿をバッチリ目撃されてしまった。

服を着ることもできず、布団でそれを隠すぐらいしかできない醜態を晒している。

そして、内緒にしていたはずの自分たちの"そういう関係"を知ったのに、新八たちがいたって普通なこと。

「姐御からおせちのおすそ分け貰ってきたから一緒に食べるヨロシ」

「銀さん、二度寝しないで起きてきてくださいよ」

「はぁい」

新八の小言に面倒くさそうな返事をして着替えている銀時の服を引っ張る。

「……どういうことだ……」

それが何を問い詰めているのかを察している銀時は、そ知らぬ顔で答えた。

「えっと……実は、二人にはとっくにバラしてました」

「……なっ……」

「俺からバラしたわけじゃないからね? 神楽にすぐバレてさ。女の勘、とか言ってたよ、凄いね、あなどれないね」

あれのどこが女だ、と言いたいところだったが、神楽にはたびたび言い負かされることもあるので子供扱いもできない。

それよりも銀時の言い草にむかついて睨みつける。

「とっくに、っていつからだ」

「……えっと……二週間……」

「なんだ、二週間前なら最近……」

「付き合ってから」

「…………すぐじゃねーかぁぁぁぁ!!!」

そうとは知らず一年近くも子供らにバレないようにコソコソしたり、誤魔化したりしてたのかと思うと腹が立つ。

しかし銀時のほうはしれっとしてきっちり着替えると、

「まあ、これからは堂々と会えるし、あいつらも普通なんだから万事オッケーってことじゃね? じゃ、多串くんも早く着替えて来てね」

わざとらしく可愛いくそう言って、銀時は逃げるように部屋を出て行った。

追いかけようにも部屋の外に新八たちが居るので着替えずには出れない。

土方は悔しそうに顔をしかめながら服を着て、出て行きにくいと思いながらもようやく和室から出てきた。

それを待っていたらしい新八が、お茶を出しながらソファに座るようにすすめる。

「どうぞ。洗面所は狭いんで、銀さんが戻ってからのほうがいいですよ」

「……わ、悪いな」

「いいえ。僕らこそ、土方さんを動揺させちゃってすみません」

二人に見つかったときはよほど滑稽な顔をしていたんだろうと思うと、ますます恥ずかしくなってしまう。

ちょこんと小さくソファに座っている土方に、向かいの席で踏ん反り返った神楽が言った。

「そんなオロオロしても今更ネ」

「……今更?」

「お前らがこうなることは分かってたアル」

神楽の当然とばかりな言い方に、女の勘とはそんなに鋭いものなのかと感心しかけた土方だったが、新八が半笑いでネタばらししてくれる。

銀時に聞えないように小声で言った。

「僕ら、銀さんが土方さんを好きだってことずっと知ってたので」

「…………は?」

「一目惚れ言ってたアル」

それは初耳だった。

酔った勢いとノリでなんとなくそんな関係になり、「良い歳してセフレってどうなの?」、って話から付き合うことにした。

土方としては、まあいいか、っていう程度の気持ちだったのだが、どうやら銀時はそうではなかったらしい。

「神楽ちゃんにバレたせいだって言ってましたけど……土方さんと付き合うことになったの、よっぽど嬉しかったんですよ」

「あんだけ毎日にやにやしてたら丸分かりアル」

今まで土方が見てきた銀時の姿からは想像できないことを、子供たちは嬉しそうに話してくれた。

ぽかんとしていると顔をタオルで拭きながら銀時が戻ってきて、

「ふぅ。多串くん、洗面所、いいよ」

「…………」

「多串くん?」

「……お、おう……」

様子のおかしい土方が入れ替わりに洗面所に行くのを見送って、銀時は首をかしげる。

銀時の秘密をバラした新八と神楽は、ぷすすーっと嬉しそうに笑った。

そして土方のほうは、洗面所の鏡に映った自分の顔が赤いのを見て眉間にシワを寄せる。

まあいいか、と思った気持ちは嘘じゃない。

だけど、今こうして銀時の気持ちを知って嬉しいと思っている気持ちも嘘じゃないからだ。

これじゃあ揃って"にやにやして丸分かり"と言われてしまうと、顔を引き締めようとペチペチ叩いていたら、新八に声をかけられる。

「土方さーん、お餅、何個食べますか?」

「…………あ?」

「お雑煮のお餅です。食べていけますよね?」

「…………2個」

「それだけでいいんですか?」

「新八ぃ、私は20個は食べるアル」

「神楽ちゃんは食べ過ぎ」

「ぱっつぁん、俺はおじるこが良いんだけどなぁ」

「甘いのは後にしてくださいよっ」

「トッシーも早く来るネ!」

「わ、分かったっ」

洗面所の向こうでキャッキャッと騒いでる銀時たちの中に、自分も含まれている。

それがこそばゆくて気恥ずかしいけれど、悪いものじゃないと思う土方だった。


 おわり



新年二日目は家族イチャイチャでした。
私はもうホントに、"銀さんは最初から土方さんが大好きでした"という設定が好き。
今年も万事屋の"家族"として土方さんには幸せになって欲しいです。

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