原作設定(補完)

□その33
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慌しく二人が出て行って静かになった万事屋。

土方は葛藤と戦っていた。

フラれる前提とはいえプロポーズはもうできない。

キープと称して万が一にでもOKされたら、ロリコン副長の肩書きが成立してしまう。

かといって万事屋関係者の他の女性を選ぶこともできないとしたら、選択肢は一つだ。

ぐっと拳を握り締めて決意すると、ソファでまだ落ち込んでいる銀時に言った。

「……メリットはなんだ」

「あ?」

「お前とつきあ……縁者になる俺の、メリットはなんだ」

悔しそうな顔の土方に、団子を失った銀時のショックは吹き飛んでしまう。

「ぶはっ! メリットとか言い出しちゃう? 俺は土方くんを助けてあげるつもりんなんだけど」

言われなくてもそんなことぐらい分かっていた。

沖田の思うようになるぐらいなら、銀時の手を借りたほうが良い気分になってしまったのだから仕方ない。

が、素直に"ありがとう"と言える性格でもないし、まだ銀時に他意がないのかも自信がなかった。

土方の心の葛藤も察することができた銀時が、可笑しそうに笑う。

「しょーがねーなぁ…………俺が出来るだけ、土方くんを助けてやるよ」

「……俺を助ける?」

「そう。土方くんが誰かと何かとトラブってたら、俺に関係なくても首つっこんで助けてやる」

「……それは、てめーが人のトラブルに首つっこみたいだけじゃねーのか」

「心外ですぅぅぅ。俺はいつだって心穏やかに、甘い物食ってジャンプ読んで毎日ダラダラ過ごしたいと思ってますぅぅぅ」

「ただのダメ人間だろーがぁぁぁ!!」

銀時らしいオチを付けられて、ついついツッコミを入れてしまう。

それが思ったとおりだと嬉しそうに笑う銀時に、土方はそれで済ますかと言ってやった。

「なんでもするのか」

「俺にできることならね」

「……じゃあ、桂のいば……」

「それは知らないからできないことだなぁ」

さらりとかわされて、本当に助けてくれる気があるのか疑わしくなって眉間にシワの寄る土方に、銀時が唐突な行動に出る。

腕を掴まれて引っ張られたなと思った直後に、しっかりと抱き締められていた。

「!!!! な、なにを……」

「今の俺にできることは、お疲れの土方くんを癒やすことかなぁ、なんて」

「つ、疲れてなんか……」

「いやいやいや。沖田くんの口車に乗って万事屋に来る時点で疲れてるから。冷静じゃないでしょ? 寝不足だし」

否定しようにもできないのは土方が一番よく分かっている。

睡眠を削って仕事をしたまま会議に参加して、沖田が提案を始めたことに頭が働かないまま同意してしまった。

後に引けなくて気付かないフリをしていたことを、銀時に見破られてくやしいのに、土方は抱き締められている腕を振り解くことができないでいた。

暖かくて優しくてホッとしてしてしまっている。

そんな安堵感はここ最近では近藤以外に感じたことはなかったし、その近藤もお妙に夢中で土方も放っておかれることが多い。

『疲れている、弱っているから、こんな簡単なことで癒やされるような気になるんだ』

それが銀時の言う"今の俺にできること"なら、今の土方に必要なことなのかもしれない。

抵抗しない土方に、銀時は満足気に笑って癒やしを続けてやるのだった。




夕方、屯所に帰ってきた土方に山崎が心配そうに声をかけてくる。

「副長、どうでしたか?」

「…………う、上手くいった」

「……えっ!!? 上手くいったって、もしかして結婚することに!?」

「け、結婚はねーけど……付き合うことになった」

「まじですか!」

「……万事屋と……」

「……え?」

「……部屋で休む。よほどじゃない限り起すな」

さっさと自分の部屋に戻ってしまった土方に、山崎は首を傾げながらも少し安心した。

出かけるときは険しい顔をしていたのに、とても落ち着いていて安らいでいるように見えたからだ。




そして、土方が杞憂したように"真選組副長が男色家だった"という噂が流れることはなかった。

どう言われてもいいと銀時のことは沖田にちゃんと報告したのに。

思い切って訊ねてみたら、

「鬼の副長がチャイナにフラれたって話なら面白いですが、そうじゃねーならどうでもいいです」

と、実に沖田らしい答えが返ってきて、呆れたような、ホッとしたような。

沖田の邪魔が入らないなら、今度の休みには銀時と一緒に酒でも飲みたいな、と思う土方だった。



 おわり



山崎とたまの後日談として、
銀時と土方の見合い話もネタとしてあったんですが、
無理矢理、神楽を挟んだ強引なネタになってしまいました(笑)
でもカップルとしてじゃないけれど、
土方と神楽が仲良しなのはちょっと嬉しいなと思うのでした。

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