原作設定(補完)

□その33
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#326

作成:2017/12/01




万事屋と喧嘩した。

原因はいつものネタで、仕事のせいでドタキャンが多いだ、近藤を甘やかしすぎだ、飯にマヨネーズ使いすぎだ、そんなこと。

いつものネタなのだからいつものように上手く流せば良かったのだが、その日の俺は機嫌が最悪だった。

仕事でいろいろあって気分が悪いまま休みになり、万事屋と酒を飲んで気晴らしをしようと思ったのに、俺の顔を見るなり万事屋に愚痴られて責められて、キレてしまった。

居酒屋で大喧嘩になり店を追い出され、そのまま別れて屯所に帰ってしまったものの、俺にはまだ余裕があった。

いつもより酷い喧嘩になったとはいえ、いつものように元に戻れると思っていたからだ。

何事もなかったように団子屋で団子を奢ってやれば機嫌を直すことができた。

もしくは、会えないまま時間がすぎると万事屋が観念して謝罪の電話がかかってきて、俺は「仕方ねーな」と言いつつホッとして仲直りしたり。

なのに今回は団子屋でも会えず、二週間が過ぎても万事屋から電話もない。

「なんで電話してこねーんだ」と逆ギレするのも過ぎて、今は「そんなに怒ってたのか?もう会いたくねーのか?」と不安にすらなっていた。

なのに自分から電話することもできず、モヤモヤウジウジする毎日。

それが一転したのは喧嘩してから三週間過ぎたときだった。




携帯電話の画面に"万事屋"の文字が表示され、土方は不安な気持ちが一気に晴れた気がした。

声がにやけてしまわないように深呼吸して通話ボタンを押したら、意中の者じゃない声が聞えてくる。

「土方さんですか? あの、志村新八です」

土方は驚いて息を飲む。

銀時に携帯の番号は教えてあったが、二人が付き合っていたことは誰にも教えてないため、新八から携帯に電話がかかってくるはずがない。

もしかして銀時の不機嫌が度を越えて付き合ってることをバラシてしまったのか。

そして仕事が手に付かない銀時を心配して、直接話をしたいと新八が電話をかけてきたのかもしれない。

土方はそんなことを考えたが、そんな気楽な話ではなかった。

「な、なんだ?」

「あの、すみません。銀さんがどこに居るか知りませんか?」

「あ?」

「実は銀さんがもう二週間帰ってこなくて……」

新八の声は真剣そのもので、銀時が仲直りのきっかけにしようと変な芝居をさせているわけじゃなさそうだ。

『二週間帰らない? どうりで電話もないし団子屋で会えないはずだ』

咄嗟にそんなことを考えた自分に、土方は自嘲気味に笑う。

「土方さん?」

「ああ、すまん………悪いが、居場所は知らねー」

「そうですか」

落ち込んでいる新八に、喧嘩したあとの銀時の動向が聞けないかと聞いてみた。

「……何かあったのか?」

「それが、居なくなる前に誰かと喧嘩したみたいでずっと機嫌が悪くて、毎晩のように飲みにいってたんですけど……そのまま帰ってこないんです」

不機嫌の原因が自分だとは知らない新八に、電話ごしでバレないからと土方はぎゅっと眉間にシワを寄せる。

銀時に何があってどこに居るのか分からないが、土方に腹を立てたまま姿を消した。

そのことが土方の胸に深く突き刺さる。

もしかしたら土方に愛想を尽かし、自分の意思で江戸を離れたのかもしれない、なんてことまで考えてしまう。

黙ってしまった土方に、受話器越しに戸惑った新八の声が聞えてきた。

「土方さん?」

「あ、いや……なんでもねぇ。それより……」

慌てて誤魔化すように腑に落ちない点を新八に問うてみる。

「なんで二週間も経ってからアイツの行方を捜してるんだ?何か手がかりがあって探してたのか?」

いくらブラック企業の社長とはいえ、子供二人を面倒みている銀時が居なくなったのに、土方がそれを知ったのがもう二週間も経過しているのが不思議に思えた。

ずっと探していたのならお妙経由で近藤から、とか、かぶき町の動きを探っている山崎あたりから、とか、もっと早く土方の耳に入ってもおかしくない。

全く知らなかったということは、最近まで探していなかったということ。

それも新八は答えてくる。

「それは……僕らも二晩ぐらいならなんとも思わなかったんですけど、3日目におかしいと思って探そうとしたらお登勢さん……大家さんが、以前は1週間ぐらいふらっと留守にしていた、って言うんで様子を見てたんです。でも1週間経っても戻らないし、やっぱり探そうということになって……手始めに銀さんの行動を一番知っている人に聞こうとしたんです」

「……一番知っている人?」

「はい。あ、悪い意味で、ですけど。銀さんをストーカーしてる隠密の女性が居て……」

その存在は土方も知っていた。


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