原作設定(補完)
□その33
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#321
作成:2017/11/19
真選組の副長室で土方は悩んでいた。
1時間ほど前に携帯への着信電話を受け取ったときは嬉しくて浮ついた気分でさえいたのに、受話器の向こうから聞えてきた言葉に苦悩させられている。
電話の相手は万事屋の坂田銀時。
ずっと片想いだと思っていたのに告白されて付き合うようになったのが三ヶ月前。
忙しいながらも時間を作ってデートを重ねてきたが、まだ一線を越えていなかった。
土方は始めからそういうつもりだったし、いつそうなってもかまわないと思っていた。
だが、お互い男は初めてだったし、銀時がどうしたいのかと考えているうちに、
「あのさ…………明日の夜……うちに泊まりませんか?」
つい先ほどの電話でそう言われて、土方のテンションは一気に上がる。
待ち望んでいたことだったので即答で頷いても良かったのだが、そこはそれ、露骨に喜んでみせたら銀時が調子に乗るかもしれない。
ちょっと躊躇ったフリをして返事を遅らせたら、銀時がとんでもないことを言い出した。
「大丈夫だよ。うん、ほら、道具はいろいろ用意しておくし、安心して」
「…………分かった……」
「じゃ、じゃあ、明日な!」
受話器の向こうで喜んでいるのが分かる声で銀時はそう言って電話を切る。
そのまま暫く動くことができなかった土方だったが、ツーツーと通話終了の音を聞きながら内心で叫んだ。
『道具って何だぁぁぁぁぁぁ!!!』
嫌な予感しかしない言葉を聞いた気がする。
女としか経験のない土方だったが、そういった類いの物を使ったことがない。
『……それとも男同士だと何か必要なのか?…………いやいやいやいや、アレ的なものは必要だけど、"いろいろ"とか言ってたし…………な、何だ?何を用意してんだあの野郎……』
付き合う前から喧嘩以外にもちょこちょこと話をするようになっていたが、大概お互いの仕事の話とか世間話程度で、そっち方面の話をしたことがない。
酒の席ならありがちな話なのに、土方はもうその頃には銀時を好きになっていたので、女相手の色恋話なんて聞きたくなかった。
避けてきてしまったが、実は銀時にはそういうマニアックな性癖的なことがあるんだろうか。
『さ、最初から?……ドSだとか公言してるもんな……変態そうだし…………………ええぇぇぇぇぇぇ』
そんな風にもやもや考えてしまって、いろんなことを後悔している土方だった。
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