原作設定(補完)
□その32
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納得はしたが今回はそういう類いの物でなかったので、土方が不満そうに眉間にシワを寄せたことで銀時もそれを察する。
ただそれはそれで理解できないことだらけだ。
「まじでか…………なんで俺?」
「……なんで?」
「そう。土方くんなら老若男女よりどりみどりじゃん。何で……つーか、俺のどこが土方くんのツボにハマったわけ?」
「……どこ……」
銀時の問いかけに土方は答えを探して黙ってしまう。
それが10分にもおよぶ長考になったため、さすがに銀時も機嫌を悪くした。
「あのさぁ、土方くぅん。俺のどこが好きかも分からないのにマジだってのはなくなぁい?」
そう言われても、土方は賢い頭をフル回転で思い出を辿って探してみたのだ。
最悪の出会いから再会、馴れ合い、腐れ縁。
ムカつくことも腹立つこともイライラすることも悔しいことも、嫌な思い出ばかりなのにどれも土方の胸にしっかり残っている。
そんな中から"好きなところ"なんて見つけられるわけがなかった。
「……んなの……わかんね……」
「あ?」
「……そんなもん分かったら、てめーなんか好きになるわけねーだろ」
土方にとって楽しいことなんてなかったのに、それでも好きだと思ってしまったのだ。
"なんか"と言ってしまったことで銀時を怒らせてしまったかと思ったが、そこはそこ、土方の思い出の中の通り、銀時は変わり者だった。
悔しそうな表情で失礼なことを言う土方の顔は真っ赤で、土方の本気を知ることができた。
『……面白っ……』
怒ってるところしか知らない土方が、目の前で自分を好きだと言ってモジモジしている。
銀時の胸の中で何かがむらっとしてきて、ちょっと試してみたくなった。
おもむろに手を伸ばすと、土方の身体をぎゅーっと抱き締めてみる。
「!!?」
「……硬っ……男の身体だもんなぁ……土方くん、あんなに脂分摂取しといて脂肪になんないの?」
モニモニと撫で回して感触を確かめたのだが、筋肉ばかりで嬉しくない。
愚痴りながら土方を見ると、真っ赤だった顔がさらに赤くなっている。
「うわ……土方くん、顔、真っ赤っかですよ」
「て、ててて、てめーが急に……んなこと……するから……」
腕の中でプルプル震えてそう答える土方は、どうやら唐突のハグに恥ずかしくなっているようだ。
予想外の反応に銀時はさらにむらっとしてしまい、再度むぎゅーっと抱き締めた。
「よ、よよ、万事屋っ」
動揺して上ずった声を上げる土方にだんだん楽しくなってきてしまう。
土方を好きになったとかそういう気持ちは全く無かったが、面白いおもちゃを手に入れたような気持ちになった。
銀時のそんな不穏な考えが伝わったのか、抱き締められているのに耐えられなくなったのか、土方は腕で銀時の身体を押して抱擁から逃げ出す。
告白が失敗した以上、いつまでもここにいる必要がないことを思い出した。
「……帰る」
逃げるようにそう言って背中を向けた土方を銀時が呼び止めた。
「土方くーん、今度飲みに行かね?」
「……あ?」
「酒なら"付き合って"やるよ」
それは土方の望む"付き合う"とは違っている。
だけど、そんな同情みたいな気遣いなんて必要ない、と突っぱねることはできなかった。
同情でも銀時なりの譲歩なのだと分かって、それが嬉しかったからだ。
「…………後で電話する」
嬉しいのが顔に出ないようにぐっと我慢して、土方はそう答えて出て行った。
思った通りの反応に銀時は満足気に笑う。
『これでしばらく土方くんで遊べるなぁ。奢ってくれそうだし、一石二鳥だね!』
土方の気持ちを利用していろいろ楽しめそうだとほくそ笑む銀時だった。
が、数ヵ月後、いちいち反応の面白い土方が可愛く思えてくることを、そしてあっさり陥落されてしまうことを、今の銀時は知る由もなかった。
おわり
んー…………似たような話をどっかで書いたような気がして仕方ない。
が、書き始めてしまったのであえて確認しないことにしました(笑)
何度も言いますが、銀さんが好きです。
土方にそれを代弁させようとすると、土方主観の話になってしまいます。
故に、土方の話ばっかりになってしまうのです。
あれぇ…………と悩む私(笑)