原作設定(補完)

□その31
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このやりとりはこれで終わらず、1時間もあるのでウロウロしていたら、“最初に買ったものより次に見たもののほうが美味そう”に見え、覗いた店先で次から次へと購入していまうという買い物ベタが陥る失敗をしでかした。

電車の時間になって駅に戻ってきた土方の両手には、ずっしりと重いぐらいの栗の袋がたくさん握られている。

『……いくらなんでもこんなにあったら迷惑なんじゃないだろうか……』

と不安になりながらも捨てるわけにも屯所に持っていくわけにもいかず、万事屋にまっすぐ向かった土方だったが、不安は杞憂に終わったようだ。

「お、おお、多串くん!!何それぇぇぇ!!」

「あ、あのな、今日行った出張先でたくさん貰っちまって……」

「それうちにくれるの!?いいの!?そんなにいっぱい!!」

「あ、ああ。屯所に持って行ったら逆に少ないしな」

「まじでか!!多串くん、大好きぃぃぃ!!!」

土方の想像の遥か上をいくぐらい喜んだ銀時は、そう叫んで土方をぎゅーっと抱きしめた。

『ええぇぇぇ、そんなにぃぃ!?』

これだけ喜んでもらえれば、照れくさくて本当のことは言えなくても買ってきた甲斐があるというものだが、思いがけないハグを堪能してる場合じゃない。

肩越しに“何やってるのこの二人”という目を向けている新八と神楽に気づいて、土方は慌てて銀時の身体を押しやる。

「ちょっ、ばっ、離せっ」

「はいはい。新八っ、神楽っ、栗をたくさん貰ったぞ!」

「うわっ、ホントにたくさんですね」

「さっそく食べるアル!」

欠食気味の万事屋の子供たちには大量の栗も宝の山に見えるらしい。

目を輝かせて栗を運ぶのを手伝い台所へ運んでいった。

「そのまま食うならなぁ、本当は焼き栗が美味いんだけど時間がかかるから、最初は茹でてみるか」

「茹でたのも美味いアル!早く茹でるネ!」

「ちょっと待ってろって……あ、多串くんも時間大丈夫か?」

「……ああ」

「じゃあ上がってゆっくりしてください。お茶入れますね」

新八と神楽がせっせと土方の世話をしてくれているので、銀時は早速栗を茹でることにした。

たくさんある袋の一つを鍋に入れたとき、ひらりと白い紙が落ちてくる。

それはレシートで、今日の日付と数時間前の時間と、わりと良い値段が印字されていた。

すぐにこの大量の栗が貰ったものではなく、土方が自分で買ってきたものだと察したが、それを追求するほど銀時も野暮じゃない。

先日栗が食べたいと言っていた銀時のために買ってきてくれたのだ。

『そういう律儀なところも、素直に買ってきたって言えないところも、ばれちゃうまぬけなところも、ぜーんぶ大好き』

嬉しそうに笑いながら、銀時はレシートをくしゃと丸めてゴミ箱に捨てる。

『栗ご飯なら食えるよな…甘さ控えめにしてやれば菓子でもいいか』

気付いてしまったことを気付かれないように、土方も嬉しくなるぐらい甘やかせてやろうと思う銀時だった。


 おわり



……銀さんに“大好き”と言わせるだけで、なんか照れちゃいますね(笑)
私の書く話はエロもないくせに、言葉で表現するってこともあまりしない……
ような気がしてるんですが、そうでもないかな?
“愛してる”が言えないんすよねぇ、キャラじゃない気がして。
せめて“大好き”で頑張ってみました。

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