原作設定(補完)

□その31
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「……てめーが素っ気なくするからだろーが……」

「はぁ?俺のせーですか?」

そう言われればイラついてしまう銀時も、言葉とは裏腹に落ち込んだ土方の姿を見たら胸がちくりと痛まないこともない。

原因が自分にある、というのは分かった。

「……俺のせーだよな」

自分の非も認めた銀時は髪をくしゃくしゃと掻いてから、このままではフェアじゃないと語ってくれる気になったようだ。

「……俺は……お前の邪魔をしたくない」

言いにくそうに、だけど一気に言葉を続ける。

「お前が仕事が好きで大事で俺を後回しにするのは仕方ないって分かってる」

「分かってるんだけど小言ぐらい言いてーじゃん。言っちゃうじゃん。人間だもの」

「だけど……お前がそのたびに申し訳なさそうな顔するから……気にすんなって言ったって、余計に気にしちまうんだろーと思って……だから逆に素っ気なくしてたらお前も気兼ねしねーかもって……頑張ってみたのでした」

こんな目にあって薬のせいで苦しそうなのに、銀時は恥ずかしさからか赤面しながら本心を語ってくれた。

土方を大切にしすぎて逆に不安にさせてしまっていた。

言葉が足りないバカップルのありがちなすれ違いだったというわけだ。

誤解だと分かればすぐに仲直りすればいいだけなのだが、今回はそう簡単に終わるものでもない。

「…万事屋…」

きゅんとした土方に可愛い声で呼ばれても、むしろ苦しくなってしまうのだ。

「…ぐ……あ、あのさ、分かってもらえたところで、帰ってくれる? ……薬効いてきてマジ限界なんで……」

媚薬なのだからかえって土方が居たほうが好都合のはずなのに、やっぱり土方を帰らそうとする銀時。

納得ができないような、寂しいような顔をする土方に、銀時は詰まりそうな息づかいで言った。

「万事屋」

「……どんな薬ですか……洒落んなんね……もうギンギンさんどころの話じゃないからね……」

へらっと笑って軽口をはいたが、膝をぎゅっと握りしめた手が苦しさを表している銀時に、土方は自分にできることは1つと分かっていた。

土方が立ち上がって銀時に近づくと、言うことを聞かない土方に露骨に嫌そうな顔をする。

望んでいることを叶えてやろうと言ってやろうとしているのに、そんな顔をされるとショックなものだ。

「……俺は……帰らない」

「…やめたほうがいいよ……ホントにヤバイから……明日お仕事できなくなっちゃうよ」

「はっ、俺はそんなにヤワじゃねぇ」

「…優しくできそうにないし…」

「いい」

もう自分からは逃げられない銀時の身体を、土方はぎゅっと抱き締めてやった。

「優しくされなかったからって俺は壊れないし、おめーのドSにだって耐えられる……総悟に比べりゃ可愛いもんだからな」

「ぷふっ、王子と比べないでくんない?……ま、大丈夫かもね、お前はドMだし」

「誰がドMだコラァ!」

銀時が笑いながら土方の背中に手を回す。

こんな間近で土方の臭いと熱を感じていたら、自分を押さえ込むこともできそうにない。

「……無理そうだったら殴り飛ばしても逃げてね」

「それはまかせろ」

ぎゅっと握りこぶしをつくる土方に、“うわぁ、痛そう”と思いながらなんとか笑ってみせる銀時だった。



(薬のせいでドSモードの銀さんと、それに堪える土方さんのエロを、心行くまで想像してください)

(“攻め媚薬にエロは必需品だろ!!”)

(無理ぃぃぃぃ!私にドSモードの銀さんのエロは無理ぃぃぃぃ)(笑)



真夜中、銀時はふぅと息をつく。

土方は気を失うように眠ってしまったので、その間に、もろもろの後処理を済ませて、きれいになった布団に改めて寝直したところだった。

身体を拭いてやっても布団から動かしても土方は起きず、涙の跡が残る目元を撫でてやる。

苦痛に瞳を歪めて涙を流しても「嫌だ」とは言わなかった。

正直、薬を盛って気持ちを確かめたくなるほど好かれているとは思ってなかった。

銀時から半ば強引に口説きおとしたようなものだったし、仕事が優先だし、甘えてくれないし。

だがそれは表に出さないように我慢していただけで、本当は後先考えずに行動したくなるぐらい好かれていたなんて。

「ものごっさ可愛いぃぃぃ!」

たまらずむぎゅぅぅぅと抱き締めると、息苦しそうに顔を歪めながらも土方は起きなかった。

聞こえていたらきっと顔を真っ赤にして怒られただろうが、幸い熟睡しているのでスリスリと土方の感触を堪能する。

会えなくて寂しいと我が儘を言ったほうが土方には嬉しいなら、これからはもっと我が儘言ってやろうと思う銀時だった。



おわり
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