原作設定(補完)
□その31
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#304
作成:2017/09/28
その話を聞いてしまったのはたまたまだった。
原田とファミレスで昼食をとっていた土方は、聞きなれた声と話方につい聞き耳をたててしまう。
「最近、銀ちゃんが元気ないアル」
「あら、そうなの?糖分が切れただけじゃないのかしら」
「それが、甘味を買ってあげても全然元気にならないんですよ」
「なにか悩みごとがアルネ」
「……気のせいじゃないかしら。銀さんに限ってそんなこと」
「そうでもないんですよ。毎日電話を見つめてはため息をついているし……今日だって姉上が奢ってくれるっていうのに来なかったし」
「まあ、それは本当に重症ね」
「…私たちには相談できないことアルか?みみずくさいアル」
「水くさい、ね。銀さんだってあれでも一応大人だもの。神楽ちゃんたちを心配させたくないのよ、きっと」
「でも銀さんが元気ないと、万事屋が暗いんですよね」
「早く元気になって欲しいアル」
「……じゃあ、ケーキでも買って行ってあげましょう。少しは喜んでくれるかもしれないわ」
食事を終えたらしい三人が変えるのを、柱をはさんだ隣の席で聞いていた土方は眉間にシワを寄せる。
よほど不機嫌な顔をしていたのだろう。
「副長?ど、どうしたんで?」
原田が心配そうに声をかけてきたので、慌ててなんでもないという顔をしてみせた。
銀時の悩んでいる理由に自分が関わっていることを、あんなに心配している子供たち教えてやれない自分に腹がたっていた。
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「付き合っても良い」
「まじでか!!」
「ただし条件がある。このことは他の奴らに知られるな」
「え、何でですか……相手が俺で恥ずかしいから?」
「違う!…知られるとちょっと……いろいろ面倒なんだよ………って、なんで嬉しそうなんだ」
「違うって即答してくれたから」
「そ、それは……」
「うん、分かった。ホントは言いたいけど…ものごっっっっっさ言いたいけど我慢する。だからよろしくね」
「お、おう」
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そして、仕事が立て込んで土方が何もできないでいるうちに、もっと腹の立つ情報が入ってくる。
「万事屋の旦那が怪我をしたそうですよ」
「なんでぃ、また何かトラブルに巻き込まれでもしたのかぃ」
「いえ、万事屋の仕事で、みたいです。なんでも屋根の修理をしてたらぼーっとして落ちたとか」
「あの旦那でも怪我なんてするんだな」
「そりゃあ屋根から落ちたら誰でも怪我をしますよ」
「旦那にその“誰でも”が通用するとは思えねーけどな……ねえ、土方さん……土方さん?」
ぼんやりしていた土方に、沖田が訝しげな視線と、山崎が心配そうな視線を向けている。
「……なんでもねぇ」
「土方さんまでぼんやりしちまうなんて、旦那のが移ったみたいでさぁ」
「………」
図星だったので反論しなかっただけなのだが、言い返さない土方がよほど不気味だったらしく、沖田は肩をすくめてそれ以上は何も言ってこなかった。
銀時の、土方の、悩みを解決する方法は簡単で単純だ。
その覚悟を土方が決めればいいだけなのだから。
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