原作設定(補完)
□その31
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#302
作成:2017/09/25
「秋はやっぱり栗だよぇ」
唐突にそんなことを言い出した銀時に、ソファでくつろいでジャンプを読んでいた土方が顔を上げた。
マガジン派で知られる彼だが、万事屋で銀時が飯を作ってる間に暇つぶしにジャンプを手にとり、なんとなく続きが気になる漫画がいくつかあったので、それだけを万事屋に来たときにまとめ読みしている。
見ると銀時はテレビをじっと見つめていて、そこには“秋の味覚特集”的なものが放送されているようだ。
「俺は秋刀魚が良い」
「栗ってさ、正にオールマイティな果物だよなぁ。栗拾いは楽しいのモンブランは美味しいし栗ご飯だっていけちゃうんだぜ」
土方の意見を無視してうっとりとテレビの栗を見つめている銀時にムッとしながら、
「……なんだかてめーが言うといやらしいこと言ってるように聞える」
「気のせいじゃね?」
「……やけに即答だな。どっかでなんかくらだねぇことをしてきたんじゃ……」
「ああっ、甘露煮! 甘露煮もいいよなぁ、お正月には必需品だよ」
テレビに誤魔化されたような気がするが、きっと追求してもくだらない話になりそうなのでやめた。
土方はもっと核心的なことを言ってやったが、
「そんなに好きなら買ってこいよ。スーパーで売ってんだろ」
「……え……多串くん……何言ってんの?」
銀時は信じられないようなもの見るような驚愕の表情を浮かべている。
真選組にいると一般人とは常識が少しズレてしまうので、何か間違ってしまったかと思ったが、
「日々の食生活もままならない万事屋にそんな嗜好品に金を使うような贅沢ができるわけがないでしょうが!この人でなしぃぃぃ!!」
「なんだとコラァァァ!!!」
ダメ人間に人でなしと言われて腹立たしさ倍増の土方だった。
そんなことがあった数日後、土方は電車の中に居た。
近藤と隊士を数名連れての日帰り出張の帰りだったが、隊士の一人から思いがけないことを言われてしまう。
「あ、次の駅は俺の地元なんですけど、栗で有名なんスよ」
「栗?」
「はい。この間テレビで紹介もされたッス」
「栗かぁ……栗ご飯とか食いてー…………って、トシぃぃ!?」
隊士が話しだす背後で車内に次の駅に到着するというアナウンスが流れはじめていたのだが、話が終わったと同時に土方が席から立ち上がり電車を飛び出して行ったのだ。
近藤たちがびっくりしている間に電車の扉は閉まり、
「……しまった……」
反射的に体が動いてしまった土方は、慌てて近藤の携帯に電話をかける。
「ちょっと野暮用で……次の電車に乗って帰るから」
謝ってから次の電車の時間を確認したら田舎の路線なので1時間弱あると分かり、
「……し、しかたねーから栗でも買ってくるか……」
渋々という顔でいそいそと土方は外へ出た。
テレビで紹介されただけあって、駅前のお土産売り場や商店街は栗推し半端なかった。
おばちゃんたちが元気にトゲトゲの殻から剥かれた生栗を売っていて、
「お兄ちゃん、栗美味しいよ!買ってって!」
そう言われても土方にはどれが美味しいのかさっぱり分からない。
粒は大きいような気がするがまだ固い殻が着いたままで、銀時がこれを調理できるのかも分からない。
まあアイツは器用だからなんとかなるだろうと、適当に買ったら、
「お兄ちゃんイケメンだからたくさんオマケしておくよ」
なんて言われて栗は袋にぎっしり詰められてしまった。
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