原作設定(補完)

□その31
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#301

作成:2017/09/23




壁の時計を見て新八が言った。

「今日はもう来ないみたいですね」

それを聞いて半分諦めていた神楽がしょんぼりとする。

そうとなれば次の行動に移らなければならず、

「じゃあ、僕は帰りますね。お疲れ様でした」

「……ご飯の支度するアル。卵かけご飯で良いアルな」

新八は帰り、神楽は台所に向かった。

『またかよ』という言葉を飲み込んで銀時は肩を竦める。

彼らが夕方の6時をタイムリミットに一喜一憂するのには理由があった。

翌日、6時10分前。

万事屋の玄関チャイムを鳴らさずにドアが開き、

「じゃまするぞ」

という声が聞こえたとき、新八と神楽がぴゅーっと出てくる。

「土方さんっ、こんにちはっ」

「トッシー、お疲れネ!荷物は私が運ぶアル!」

満面の笑みで出迎えてくれた二人。

土方が両手に持っていた重いレジ袋を、神楽は軽々と持って台所へ飛び込んでいく。

熱烈な歓迎ではあったが、土方は複雑な気持ちになった。

果たして待っていたのは土方なのか、食料のいっぱいにつまった袋なのか。

「両方だから大丈夫だって」

顔に出ていたのか、遅れて出てきた銀時が苦笑しながらそう言った。

銀時と付き合うにようになった土方が、子供たちにバレたことをきっかけに万事屋に出入りするようになって数カ月。

時間ができたら食料持参でやってきて、四人+一匹で食事をし、新八は神楽と定春を連れて家に帰る。

そんな生活に慣れてきたし、楽しみでもあった。

ただ真選組はお役所と違い不規則で、土方の休みも延期になったり無くなったりすることが多く、“来る”とちゃんと約束できないため、新八と神楽は毎日6時までそわそわするのだ。

二人とは目的は違うがもちろん銀時も同じで、慰められても納得できないような顔をしている土方に手を伸ばす。

親指で目元にできたクマをなぞり、頬に触れる。

休みを一回飛ばしているので二週間ぶりに姿を見せたということは、ずっと忙しかったということ。

「お疲れさん」

優しくそう言っておもむろに土方をぎゅーっと抱きしめた。

労いの言葉と心地よい体温に、土方も甘えてしまいたくなるが、ここはまだ子供らの居る万事屋だ。

両手で銀時の身体を押し返し、

「てめー、離せぇぇぇ。ガキらが居るだろうがっ」

「大丈夫、見てないから」

「そういう問題じゃねぇ!」

笑いながら身体を離す銀時に、内心で名残り惜しく思うのだった。

慣れたのか空気を読んだのか、二人のイチャイチャが終わってから新八がお茶を手に台所から出てくる。

「お茶どうぞ。食事ができるまでのんびりしててくださいね」

部屋のテーブルにお茶を置き、土方の定位置のソファの前にテレビのリモコンを置くと、そう言って台所へ戻って行く。

スポンサーの土方には休んでてもらい、万事屋三人での食事の準備となっていた。

言葉に甘えて土方はソファに座って息をつく。

ここで食事をするのは別に銀時と付き合ってることがバレて子供らに気を使ってるわけでもなく、じり貧の万事屋を心配してるわけでもなく、ちゃんと自分のためだった。


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