学園設定(補完)

□同級生−その3
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「…んー……寝惚けてんのかコラァ……坂……」

お互い酔っ払っているのは分かっているため、半笑いで銀時の身体を押し退けようとした手は、銀時の声で止まる。

「土方ぁ……好きだぁ……ものごっさ好き……マジで好き」

そう何度も繰り返しながら抱き締めてくる銀時に、土方の酔いは一気に醒めた。

「…な……坂田?」

あまりにもはっきりと言われたので起きているのか確認しようとしたのだが、抱き締める腕が強すぎてそれも叶わず、呪文のように何度も聞かされる告白。

酔っ払いのたわ言だとは思えなかった。

+++




「……いや……酔ってたし、寝惚けてたし……そんなんで……そう決めつけるのは……」

そう言いながらも銀時の表情は焦りまくっていて、誤魔化せそうにない。

我慢していると思っていた秘めた想いを、全然我慢できていなかったことを知って激しく動揺していたが、土方のほうは落ち着きっぱなしだ。

「てめーの分かりやすい性格を踏まえてよくよく考えてみたら、思い当たるフシがたくさんあった」

「まじでか」

「……割と……丸出しだった」

そう言われ銀時は真っ赤になった顔を両手で覆うと、その場にしゃがみ込んだ。

土方に告白してしまっていたとは知らずに悶々として、離れることを決意した自分自身の痛さ。

土方のほうは銀時の気持ちを知っても、知っていることを銀時に気取られないぐらい冷静に振舞っていたこと。

恥ずかしさに沈んでいる銀時に、土方はようやく目を向けた。

これだけ落ち込んでくれれば、素気無く扱われたことに対するウサも晴れるというものだ。

「……てめーが違う学校に行くって決めたのがソレのせいなら、ちゃんと言ってやろうと思ったのに、てめーがそんなの無かったことにしよーとするから……」

突き放されたことを怒っていたんじゃない。

あの日銀時は突き放すと同時に土方の気持ちをも拒絶した。

土方を好きになったことを認めず無かったことにしようとする銀時に、言えるはずがなかった。

「……嫌じゃねーって……嬉しかった…とか、言えるわけねー……」

独り言のような土方の言葉に、しゃがみこんでいた銀時はがばっと立ち上がり信じられないようなものを見る目で土方を見る。

今度は俯いたままの土方の顔はやっぱり見えなくて、言葉の意味を計りかねた。

「……な、なんて言った、今……」

「…………」

答えない土方に、銀時は恐る恐る近付いてみる。

聞き返して当然だ。信じられなくて当然だ。受け入れられるとか、そんなこと考えもしなかったのだから。

「……土方……」

「俺は悪くねーぞ。てめーが勝手に離れて行ったんだからな」

ふて腐れたようにそう言われ、銀時は何度も躊躇いながら土方に近付いて、そして手を伸ばす。

両腕を掴んでみたが土方は逃げようとしなかったので、そのまま包み込むようにそっと抱き締める。

「……うん……ごめん……」

土方の気持ちを知ってしまえば、自分がどんなに酷いことをしたのか自覚せざるを得ない。

自分ばかり辛い切ない苦しいと思い込んで、土方にも同じ思いを味あわせてしまった。

後悔も反省もこれからみっちりするとして、今は聞かなければならない、聞かずにはいられないことがある。

「……えっと……そ、それで……今はどうなんですかね……まだ……す、好きでいてくれたりします、か?」

緊張のあまりぎこちない敬語になる銀時に、

「好きじゃねー…………なら会いに来るかバカ」

そう言って寄りかかるように銀時に預けた土方の身体は熱くて、きっと全身真っ赤になってるんじゃないかと思えた。

『まじでか!!!』と内心で叫びながら抱き締める腕に力を込めようとしたとき、肩口で土方に問い返される。

「てめーは、どうなんだよ」

“好きだった”と過去形だったついさっきの告白。

改めてしっかりと抱き締めてから、銀時は土方が欲しがっている言葉を伝えた。

「お、俺も、好きだよ」

納得してくれたのか、土方の腕も銀時にしがみ付いてくれたので、銀時はようやくずっと抱えていた苦しみから解放される。

自分が臆病だったばかりにこれから3年の時間を共有することはできないけれど、とりあえず、目先の夏休みはめいっぱいエンジョイしてやろうと思うのだった。



 おわり



うわぁぁぁぁ……青臭い(笑)
私の考える同級生設定ってこういうの多いんですよね。
銀さん一人で悶々として土方から離れようとする話……書いてない話もそればっかり。
短いのが一つ書けてよかった。
全然違うタイプのラブコメ話が一つあるんだけど……書けるかなぁ……自信ないなぁ(笑)

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