学園設定(補完)
□同級生−その3
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待つこと10分後、
「銀時ぃ、入るぞ」
ようやく声がして扉はゆっくりと開き、十四郎が両手で白い箱を持って姿を見せた。
その箱を真剣な顔で大事に慎重に持って歩いているから遅くなったようだ。
ベッドの脇のテーブルに箱をそーっと置き、
「やっと着いたぁぁぁ」
ほっと息をついてから、いつもの十四郎の顔に戻った。
「大丈夫か? もう熱は下がったか?」
「う、うん」
「土産、持って帰ってきたぞ!」
ドヤ顔の十四郎が差し出した箱からは甘い匂いがした。
開けてみると中には、スライスしたイチゴがたくさん乗ったタルトっぽいケーキと、手作り感丸出しの不格好なスイートポテト。
それぞれ2つづつ詰められていたが、タルトの1つは大きく崩れている。
それを見た十四郎が、
「あ!!あんなに慎重に運んできたのに!」
がっかりした声を上げた。
不器用で割とがさつな十四郎が、体験学習で作ったケーキを大事に運んでくれた。
それだけで銀時は十分嬉しかったから、壊れたタルトを手掴みで取るとそのまま口に運ぶ。
「…うん、美味いよ!」
銀時が嬉しそうなので十四郎も安信したようだ。
「だろ?ま、それは用意されてたタルトに果物乗せただけなんだけど、お前用にイチゴばっかり乗せたんだ」
ちゃんと自分の好きな物を分かっててくれたんだと、銀時はほんわかした気分でタルトを平らげた。
それを待ってましたとばかりに、十四郎が食いぎみにもう1つのスイートポテトを指差す。
「そっちは全部俺が作ったんだからな。粘土遊びみてーで面白かった」
どうりで不格好なはずだ。
だけど、銀時に持って帰ってやるんだと、一生懸命作ってくれたに違いない。
スイートポテトも手に取り一口食べて、十四郎の好きな食べ物をおもいださせられた。
「隠し味にマヨ入れてみた」
『全然隠れてないんですけどぉぉぉ!』
口いっぱいに広がるマヨに心の中で叫びながら、
「美味いか!?」
「……う、うん!」
称賛を期待する十四郎に、銀時は必死な笑みを浮かべる。
それでようやく安心したのか、十四郎はにいっと笑い、
「作り方覚えてきたから、風邪が治ったら一緒に作ろうな」
なんて言うから、いくらでもマヨ入り菓子を食べてやる覚悟を決めるのだった。
おわり
秋先取り、それだけの話(笑)
二人が一緒にいれば、それだけで銀土だよね?うん。