学園設定(補完)

□同級生−その3
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会社の同僚と飲んだ分も残っていたせいもあり、土方が良い感じに酔っ払ったころ銀時は戻ってきた。

「おまたせー。飲んでる?」

「……飲んでる」

一人で飲んでいる間にモヤモヤしたりムカムカしたりしていたので、席に着いた銀時に真相を問い詰める勇気が出ていた。

正面からじっと銀時を見つめ、不機嫌そうに土方は言う。

「……お前、なんで黙って居なくなった? なんで、俺のことを避けるんだ?」

進路が分かれてもいつでも会えると油断していたら、携帯が繋がらなくなっただけのことで一切の連絡が取れなくなった。

誰に聞いて行先が分からず、銀時がわざと連絡を絶ったのだと気付いたのは二ヶ月も過ぎた頃。

それまでは落ち着いたら連絡をくれるだろうと、大学生活であったことなど会って話したいと、待ち続けた土方の携帯は一度も鳴ることはなかった。

悲しくて腹がたって「もういい」と思いながらも、ずっと忘れることができずにいた5年間。

就職を決めて見ず知らずの町に来てから再会することになるなんて思っていなかった。

土方が酔っ払いながらも怒っているのを感じて、銀時は肩を竦めて笑う。

「……ごめん。やんごとなき事情がありまして……」

「だから、その事情が何だって聞いてんだ」

「それを俺の口から言うわけには……」

「あ?」

「もう少しだけ待ってくんない?あ、おつまみとか何か食う?」

銀時が誤魔化すようにさっとメニューを出したら、じーっとそれを見つめていた土方が呟く。

「……エビマヨ……マヨ増量で」

「ぶふっ……了解」

相変わらずのマヨ好きが可笑しかったのか、銀時は笑いながら席を立った。

手作りだが作り置きの料理をチンしてマヨを増量し銀時が戻ってくると、土方は酒のつまみに合うなと思いながら黙々とそれを食べる。

ちょっと気が反れたんじゃないかと銀時はホッと息を付きながら、腕の時計をチラリと見た。

それから店の入り口のほうをチラリと見て、見慣れた顔がこちらに向かってくるのを確認してにやりと笑う。

夜中に呼び出されて起こった表情で銀時のところまでやってきて、

「おら、これでいいのかよ…………!!?」

持っていた紙袋を差し出したところでギクリと身体を強張らせて動けなくなった男は、銀時と同じ顔をしていた。

背中を向けていたので声がするまで気付かなかった土方は、なんだと思いながら顔を上げ、動けなくなっている男を見て酔いが一気に吹き飛んだ。

金髪の銀時と同じ顔をした、高校のときと同じままの銀髪の銀時。

「…………ぎ、銀時?」

「な、なんで土方がここに……」

お互いが信じられないという顔をしてそう呟き、それから金髪の銀時を見た。

してやったりという顔で笑っている金髪の銀時に、土方はやっぱり意味が分からず二人を見比べ、銀髪の銀時はすべてを察して眉間にシワを寄せる。

急に呼び出されたのも土方に会わせるためだと気付いたから、紙袋をテーブルに置くと、

「届けたぞ。じゃあな」

そう言い捨ててくるりと背中を向けた……のだが、足が動かなかった。

服をがっちり掴まれて引き戻されているのだと知り、恐る恐る振り返るともっと不機嫌そうな顔の土方に睨まれる。

「ちゃんと説明していけコラァ!」

どうやら土方は金髪の銀時を、銀時だと思っていたらしく、本気で怒っているときの土方だと懐かしく感じながらも、逃げられそうにないと観念した。

ソファに座り金髪の銀時を指差し、

「……コイツは金時」

「生き別れの双子の兄でーす。よろしくね、土方くん」

同じ顔でにっこりと笑う金時に、さらに眉間のシワを深くする。

同じ顔をしているだけに、この調子の良さが腹立たしくなるのだ。

「……き……金時? 生き別れの兄?」

高校で仲良くしている間に兄がいるなんて聞いたことはなかったが、“生き別れ”というからにはなにか事情があるようだと知ったら少し気分が落ち着いてきた。

“銀時”と声をかけて人違いだと分かっていたはずなのに、銀時のフリをして面白がっていたのはさておき。

土方からも聞きたいことはたくさんあったのだが、先に口を開いたのは銀時のほうだった。

「つーか、お前、なんで土方のこと知ってたんだよ」

そう言われてみれば、土方のほうは金時の存在も姿も知らなかったのだが、金時のほうは土方のことを知っていて、しかも銀時から聞いたわけじゃないらしい。

銀時に睨まれても、金時のほうはヘラッとしている。

「お前から聞いたんですぅ」

「あ?ねーよ、俺からなんて」

「言いました。寝てるときとか、酔っ払ってるときとか」

「……な……」


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