学園設定(補完)
□同級生−その3
12ページ/17ページ
#53
作成:2017/09/12
坂田銀時(小五)は火照った身体とぼんやりする意識の中で天井を見つめていた。
体温を測ったら38.5度。
昨夜からダルいなぁと思っていたのだが、朝になったらばっちり熱を出してしまい、ベッドに逆戻り。
母親に「たぶん風邪ね。今日は学校休みなさい」と言われて、ものごっさへこんでいるところだった。
風邪というものは、ひいて欲しい時にはひかないで、ひいて欲しくないときにひくものである。
前者はテストやマラソン大会、後者は調理実習のある日や遠足などだ。
今日は体験学習で遠方の農家で芋掘り、その芋を使ってのスイーツ作り、という銀時にとってダブルで楽しい授業だったのに。
泣きたいぐらいがっかりしていると、階下の玄関チャイムが鳴る音が聞こえた。
「おはようございます」
「十四郎くん、おはよう」
母親が応対に出るとそう挨拶する声が聞こえ、銀時はさらにがっかりすることを思い出した。
土方十四郎は隣の家に住む幼馴染で、いつも一緒に遊んでいたが、小学校に入ってから一度も同じクラスになったことがなかった。
5年生になった今年、初めて同じクラスになり、初めてずっと一緒に行事に参加できるはずだったのだ。
甘いものが苦手な十四郎に「作ったスイーツはお前にやる」と言われていて、ものすごく楽しみにしていたのに。
「……会ってもいいですか?」
「まだ病院にも行ってないし、うつると大変だから今はやめておいたほうがいいわ」
銀時の具合が悪いのを聞いたのだろう。
十四郎は心配げに面会を申し出たが、実に大人な意見で断られてしまい、しぶしぶ一人で学校へ行ったようだ。
それを聞いていた銀時はますます寂しくなってしまう。
食欲が出ないので母親が持ってきてくれた大好物のプリンは、全然美味しく感じられなかった。
目を覚ますと時計は4時近くになっていた。
病院に行って「風邪だろう」と診断され、注射を打ってもらった甲斐があり熱は下がっている。
改めて時計を見て、十四郎のことが気になった。
体験学習はとっくに終わっていて、予定では3時ごろには家に帰って来れるはずだ。
帰ってきたら真っ先に来てくれるんじゃないかと思っていたので、この時間になっても十四郎の姿がないことが寂しく感じる。
寝ているからと帰されてしまったのだろうかと思っていたら、玄関のチャイムが鳴って待ち人の声が聞こえてきた。
銀時の部屋に上がってくるようなので、“病人っぽい”自分がなんだか気恥ずかしくて布団にしっかり潜っていたが、部屋の扉はなかなか開かない。
いつもならドタドタと走って飛び込んでくるはずなのに、階段を上がる足音もしない。
「?」
.