学園設定(補完)

□同級生−その3
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#50

作成:2017/08/20




「……ぎ、銀時!?」

そう声をかけると、深夜近い歌舞伎町のあるホストクラブの店先で、客引きをしていた金髪の青年が振り返る。

懐かしい顔に土方の胸はぎゅっと締め付けられた。

高校でずっと仲の良かった坂田銀時が卒業と同時に音信不通になって、あれから5年。

大学を卒業して就職し、新人のうちは仕方ないと会社の飲み会で二次会まで付き合って、一足先に出てきた帰り道で懐かしい姿に思わず声をかけてしまった。

5年経っているとはいえ、高校を卒業してからの5年ではさほど容姿も変わっていないのに、呼んだ名前に自信がなさそうだったのは銀時の風貌の変化のせいだった。

振り返った男がきょとんとした顔をしているので、やっぱり人違いだったかと思えたほど。

男は土方をじーっと見つめたあと、

「……土方?」

そう呟くように名前を呼ばれたのでホッと息をつく。

人違いでないのなら、再会を喜ぶ前に聞いておきたいのは変貌のこと。

「どうしたんだ、その頭」

高校のときは名前と同じ銀髪だったのに、今は金髪で、しかも全身どう見てもホスト仕様の出で立ちだったのだ。

土方の戸惑いを知ってか知らずか、銀時はにいっと笑って軽く答える。

「イメチェン? 金髪のほうがチャラそうだろ?」

チャラく見られたくてワザと金髪にしたという銀時に、土方はなんだかモヤモヤした気分になった。

そもそも音信不通になったことだって、当時はとてもショックで寂しいと思っていたのに。

「……ホスト……なのか?」

見ればわかることだが、土方が改めてそう問いかけたのには理由があった。

高校3年のとき、進学を決めた土方に対して、銀時はやりたいことがあるからと就職を選んだ。

ずっと一緒に居て、もっと一緒に居たいと思っていた土方は、進路が別れることをがっかりしながらも、銀時が決めたことならと応援したかった。

だけどその“やりたいこと”を最後まで教えないまま連絡が取れなくなってしまい、再会してみればこの姿。

これが銀時のやりたかったことなのだろうか。

自分の知っている銀時とはイメージが違うし、もちろん、“やりたいこと”が叶わず違い道を選んだ可能性もある。

だが銀時の笑顔にはそんな“迷い”のようなものはなかった。

「そうだよ。割と売れっ子だからね。似合うだろ?」

嬉しそうにそう言われては、応援したかった気持ちに嘘はないので“別にいいか”と思えなくもない。

残るのは“何故音信不通になったのか”だが、それを自分から口にするのは悔しいような気がして言えない土方に対し、

「ちょっと店に寄って行かね? もっと話がしたいし」

なんて銀時のほうから言い出した。

「店ってホストクラブだろ? 男が行くところじゃ……」

「あー、大丈夫大丈夫。酒を飲むだけならキャバクラと変わんないから」

就職してからそういう店にも連れて行かれるようになったので、土方はそれを思い出して“そんなものか?”と納得する。

店内に案内されてみるとやっぱりキャバクラとはだいぶ違う雰囲気だったが、銀時は目立たない場所に席を用意してくれた。

それでも居心地の悪い思いをさせられた上に、銀時は自分で言っていたようにちょくちょく他の席に呼ばれて行ってしまう。

なかなか話をできなくて土方はチビチビ酒を飲むしかなかった。




「もしもーし、俺、俺」

『……詐欺なら他を当たれ』

「はいはい。あのさー、忘れもんしたんだけど店まで届けてくんない?」

『あ?嫌に決まってんだろ』

「いいじゃん。酒を奢るからさー」

『疲れてんだよ。じゃあな』

「待った待った。じゃあ、依頼」

『あ?』

「ちゃんと料金は払うから、俺の部屋からスーツの替えを店まで運んでください、万事屋さーん」

『……チッ』

ツーツーツー

「さてと。面白くなってきたぞ(笑)」



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