学園設定(補完)

□同級生−その3
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#47

作成:2017/07/01




坂田銀時は教室の自分の机でふて腐れていた。

高校に入学して早3ヶ月、毎日がつまらない。

中学3年の夏には、こんな高校生活を想像だにしていなかった。

そうなる道を選んだのは自分だったけれど、後悔してウジウジするのも悔しい。



中学に入って仲良くなった男子生徒がいた。

趣味も嗜好も性格もまったく違うのに、なぜか妙に気が合って、何をするのにも一緒だった。

一緒にいると楽しかった。

その楽しさを中学だけで終わらせたくなくて、高校も同じところへ行こうと思った。

頭はそいつのほうがちょっぴり良かったので、同じ高校に行くためにと勉強を頑張ってみたり。

なのに、気付いてしまった。

居心地の良さの理由も、一緒に居たいと思う理由も。

好き、なのだからだと。

友情ではなく、愛情だったからなのだと。

その勝手な気持ちを、押さえられそうにない気持ちを、これ以上そいつに向けることが耐えられなくなって逃げることに決めた。

別な高校に行くと決めて一方的に突き放したら、それ以来口もきかず卒業して、友情すら終わった。

それでいいと、これでいいのだと思った。



のに、こうしてウジウジしたり悶々としたり。



新しい生活が始まれば忘れられると、離れていれば未練も消えてくれると思った。

だが結局どちらもどうにもなってなくて、どうしれば良かったのだろうかと悩み続けた結果、この想いを清算する以外方法がないのだ気付く。

銀時は土方に「会って話がしたい」という一言と、場所と時間をメールで送った。

届かなかったという案内メールが届くのも覚悟したがそれはなく、土方からの返事のメールもない。

拒否設定されているかと思ったが通知メールもないので、きっと読んでいて、おそらく来てくれるんじゃないかと思う。

夏休みを高校生らしくエンジョイできるかは、その結果次第ということになる。

前向きな決意と、やっぱり送らなければ良かったと後悔を繰り返しながら、銀時は約束の日まで落ち着かず過ごした。




その日、待ち合わせに指定した公園に、時間どおりに土方は現われた。

だが銀時にはそれを嬉しく思うことができなかった。

土方は明らかに不機嫌そうな顔で目を合わせようともせず、声をかけるのさえ躊躇われる状態だ。

『うっわ……ものごっさ怒ってるなぁ……無理もねーか……』

自分が仕出かしてきたことを思えばそう納得もできるし、これからますます怒らせるようなことを言わなければならないのだ。

土方が足を止めたのは銀時から少し離れた場所で、同じことを何度も言う勇気はないので聞き返されないようにはっきりと言ってやった。

「……来てくれてサンキュな……」

「…………」

「……高校変えた理由を言えなかったことがどうしても吹っ切れなくて……お前はもう別に聞きたくねーかもしれないけど……」

そう言うことで、一応土方に“聞かない”チャンスを与えたつもりだったが、土方は何も言わず立ち去りもしない。

銀時は汗ばむ掌をぎゅっと握り締め、ずっと抱えてきた秘密を口にした。

「俺……ず、ずっと……お前のことが……好きだったんだ……」」

「…………」

「友達としてじゃなく、本気でお前のことが好きで……だからお前の側にいるのが辛くて……」

本気で真剣に伝えたとしても、突拍子もない告白だったと思う。

だが、土方は相変わらず不機嫌にそっぽを向いたままで、銀時のほうが拍子抜けしてしまった。

親友だと思っていた相手に“好きだ”と言われて、無反応とかないだろう、と。

「……あのう、土方? 驚かねーの? 嘘だろ、とか、気持ち悪ぃ、とか」

そんな反応すらしたくないほど怒っているのならもう話をするのも無理かと思われたとき、土方がようやく口を開く。

「……知ってたし……」

突拍子もない告白に驚かされたのは銀時のほうだった。

「………は?………」

「知ってた」

「……え? 俺がお前を好きだってこと? いや、んなわけ……な、なんで……」

マヌケな顔でパニックになる銀時に、土方はあくまでも冷静に話してくれる。



+++

親が留守にしている中学3年男子のお泊り会なんて、やりたい放題のちょっとしたパーティーみたいなものだった。

冷蔵庫からビールをちょろまかし、好きな食べ物ばかり並べたテーブルで乾杯したり。

だが二人とも飲んだことがなかったので、半分も飲まないうちに酔っ払ってすぐにダウンしてしまった。

どのぐらい寝てしまったのかは分からないが、土方はぎゅうぎゅうと身体を圧迫される暑苦しさで目を覚ます。

目を開けると床に寝転んだまま、銀時にしっかりと抱き締められていた。


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