学園設定(補完)
□同級生−その3
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#38
作成:2016/12/22
「だーかーらっ、サンタなんていないんだよっ」
「で、でもっ、毎年ちゃんとプレゼントが……」
「お前んちの親が買ってきたんだよ」
「まじでか!」
終業式が終わって十四郎の家で遊んでいた銀時は、弱十一歳にて知らされた真実に衝撃を受けた。
もちろん十四郎に悪気があったわけではなく、十一歳にもなってサンタを信じているという恥ずかしい幼馴染を成長させたかっただけ。
「なんだ、そうか」と笑い話にしてくれるかと思ったのに、
「ちくしょう、あのくそ親父ぃぃぃ!」
そう穏やかではないセリフを残して、銀時は怒って十四郎の部屋を飛び出して行ってしまった。
残された十四郎はぼかんとしつつ、余計なことをしてしまったのかもしれないと思うのだった。
その夜、仕事から帰った坂田父は坂田母と共に、息子に怒られていた。
「よくも騙したな!!サンタなんていねーんじゃねーか!」
「ははは、まさか十一歳まで信じるとは思わなくてな、つい」
可愛い一人息子が目を輝かせてサンタを心待ちにしているため、坂田父は毎年“サンタ”の役を務めてきた。
もちろん坂田夫婦のほうも悪気があったわけではない。
が、銀時にはそうとは思えない理由があった。
「良い子にしてねーとサンタが来ないって言って、たくさんお手伝いさせたくせにぃぃぃ!!」
坂田母が息子をそう唆し、サンタを利用してお手伝いをさせてきたのだった。
サンタが居ないことよりも、むしろそっちのほうが悔しい銀時は、
「もうクリスマスなんてやらねぇぇぇ!!」
そう叫んですっかり拗ねてしまったようだ。
謝ったり宥めたり、大好物のケーキで釣ってみたりしたのだが、頑固な息子は機嫌を直してくれず、クリスマスイブの夜、いつもの“川の字”ではなく、部屋の隅っこに布団を敷いてさっさとふて寝してしまう銀時。
こういうとき自分の部屋があると格好が付くのだが、あいにく寝室は親子一緒なので仕方ない。
しーんと静まり返った真夜中、人の気配がして銀時はうっすらと目を開けた。
頭の上のほうで誰かが動いていて、ちらりと見えた赤い服。
『サンタ!? 父ちゃん、性懲りもなく……』
偽物だとバレたのに坂田父がわざわざサンタの扮装をしているのかと思った銀時だったが、薄暗い部屋の中、目の前には父と母が並んで寝ているのが見えた。
となると銀時の頭上で動いているのは……。
「本物のサンタ!?」
そう叫んでガバッと起き上がった銀時だったが、そこにいたのはぶかぶかのサンタの服を着た十四郎だった。
「び、びっくりさせるんじゃねぇぇぇ!! ……あ……」
銀時に気付かれていないと思ってた十四郎は、驚いてつい素で怒鳴ってしまった。
「……と、十四郎?」
「おう」
「なにしてんだ?」
銀時が問いかけると、十四郎は恥ずかしそうに答える。
「……サンタはいねーし、おじサンタも卒業したって聞いたから…俺が新しいサンタになってやろうと思ったんだよ」
真実をバラして親と喧嘩しているのを知って、十四郎なりに銀時の機嫌が直る方法を考えたらしい。
銀時の好きなお菓子がいっぱい詰まった袋はきっとみんなで用意してくれたのだろう。
それを手に取り、
「ありがとう、サンタさんたち」
十四郎サンタと、寝たフリの父母サンタに笑って礼を言う銀時だった。
おわり
久々の小学生の同級生ネタでした。
ラブ度はまったくありませんが、可愛いよね、うん(笑)