学園設定(補完)

□逆3Z−その3
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ギャーギャー言い合っている双子を見ながら、土方はいろいろ納得した。

最初に会った銀時とずっと会っていた銀時に感じていた違和感は、別人だったのだから当然のことだ。

銀時があの時見せてくれた優しさは、金時の広〜く軽〜い優しさとは違うような気がしたのは間違いじゃなかった。

そのことにホッとしている自分と、“気に入った子と仲良くしたい”と思っていてくれたことが嬉しい自分。

土方は“慕ってくれている生徒第1号”と、“たぶん慕ってくれている生徒第2号”を見つめて笑った。

その顔があまりにも可愛いので、喧嘩をしていた双子も思わず動きを止める。

銀時は『はわぁぁぁぁぁ』とドキドキし、金時はそんな銀時を見て『ぶっふーっ、おもしろっ』と楽しんでいた。

いつまでも二人を喧嘩させておくわけにはいかないので、土方は銀時に話しかける。

「さか………えっと、銀時?」

「は、はいっ!」

「お前、数学の成績は?」

「……は?」

「悪いか?赤点か?」

「いや、赤点とるほどバカじゃないし…」

金時がほとんどの教科赤点なのを知っていて嫌味で言ったのだが、慣れっこの金時には通じなかった上に逆襲された。

「じゃあお前にはコレ使えないなぁ」

そう言って金時がポケットから取り出したのは、この数学準備室へ通うための許可証。

銀時も今回はたまたま教師たちに遭遇しないで済んだが、許可証なしに生徒一人で1年校舎は歩けないのだ。

なんで金時がそんなものを、とは思わなかった。

許可証には自分に名前が書いてあり、土方を騙してちゃっかり手に入れたものに違いないのだから。

「おまっ、それはっ……」

奪い取ろうとした銀時をひらりとかわし、

「仕方ねーから今までどおり俺が使って……」

からかうように笑った金時の手から、土方がそれを奪う。

「お前は銀時じゃねーだろ。だから無効!」

「えぇぇぇ」

金時がガッカリしているのを見て銀時がざまーみろという顔をしている。

今回のことでも分かるが、自由奔放な兄に振り回されつつ、仲の良い兄弟なんじゃないかと土方は思った。

というのも、金時は拗ねたような顔をして、

「ちぇっ。だったら、もう帰ろうっと」

そう言うと許可証を土方に渡し、軽い足取りで部屋を出て行ってしまったからだ。

ふざけたような言い方をしていたけれど、弟のため、というのもあながち嘘じゃないんだろう。

「先生、ごめん。あいつ先生に無理言ったんじゃねーの?」

“兄の心 弟知らず”で、銀時にはまったく通じていないようだ。

仕方ないので土方は、頑張っていた兄の汚名を少しだけ返上してやろうと思ったのだが、

「俺がくれてやったんだよ。ライターの礼に………あ……」

それすら人違いだったことに気が付いた。

「ライターの礼はお前にしねーとダメだったな。何か欲しいものねーか?」

突然聞かれて動揺しながらも、銀時にはずっと抱えていた思いがあった。

初めて会ったあの日から、会えないかとあの場所に何度も足を運んでいた。

会って話してもっと仲良くなりたいと。

決心したように口を開き、

「先生っ、俺と付き合ってくださいっ!」

思っていた“目標”よりもずーーーーっと先にあるはずの願いが聞えてきて、銀時と土方は部屋の扉のほうに視線を向ける。

出て行ったはずの金時が扉の隙間から代弁したものだった。

「金時ぃぃぃぃ!!!」

銀時に怒鳴られて、今度こそ金時は走って逃げていったようだ。

「あんのバカ兄貴っ」

顔を真っ赤にして銀時は本気で怒っているようだったが、土方にはそんな姿も微笑ましかった。

そんな風に笑われると子供扱いされているような気がして微妙な銀時だったが、面白半分でもせっかく作ってくれたきっかけないのでムダにはしない。

「……それ、でいい」

「あ?」

「それがあればまたここに来ていいんでしょ? だったらそれがいい」

照れくさそうに金時が置いていった許可証を指差す銀時に、土方も少し照れくさかった。

“またここに来て先生に会いたい”と言われたんだと思う。

土方は笑って許可証を銀時に渡し、

「許可理由が勉強だからな、そのためなら来ていいぞ」

銀時の気持ちを分かっていながら、はぐらかすようなことを言ってやった。

それでも銀時は嬉しそうに笑って受け取ってくれたので、改めて胸がほっこりする土方だった。



 おわり



金銀双子ネタでしたぁ!
他所ん家の双子+土方を見て「可愛いなぁ」と思ってたんですが、せっかくなので思い切って土方を先生にしてみました。
本当はこの話が“始まり”で、不定期連載にするつもりだったんですが……どうだろう(笑)
双子は可愛いのでまた書きたいと思うのですが、続きになるかは不明です。


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