学園設定(補完)

□逆3Z−その3
21ページ/24ページ


後日談。


全国大会会場。

懐かしい会場を嬉しそうに見回している土方を、満足げに見つめる坂田……から少し離れたところで場の雰囲気に呑まれてガチガチに緊張している部員たち。

「全国大会って……俺たちなんでこんなところにいるんだ?」

「土方先生と坂田先輩が入ってきてから、強くなるのが楽しいなぁ、なんて思っていたら、秋の県大会であれよあれよと言う間に優勝しちゃったからですよ」

楽しく部活動をしていた剣道部だったが、土方と坂田は上手いこと“厳しすぎもせず楽すぎもせず”部員たちをノセてレベルアップさせた。

経験者が多かったとはいえ、二ヶ月ほどの練習で優勝なんてできるはずもなく、ほとんどが坂田の功績だった。

「……坂田先輩って何者ですか?県内出身らしいですけど、小、中って名前も聞いたことないですよ……」

これだけ強くて経験者で、見た目があの通りなのでどこかで噂ぐらい聞いていても良さそうなものだ。

部員たちがじーっと坂田を見つめていると、その視線に気付いたのか坂田が近づいてくる。

緊張している部員たちを落ち着かせてやろうと思ったのだが、思わぬ声が背後から聞こえてきた。

「お前……銀時か?」

「銀時!?」

部員たちからは声の主たちは見えなかったが、正面を向いている坂田の表情は見えた。

あからさまに「げっ」と嫌そうな表情をしたあと、くしゃりと顔を歪めて変顔のまま振り返る。

「ひ、人違いですよ」

その誤魔化し方はどうだろう、と部員たちが思ったように、当然声の主たちにも通じなかった。

「誤魔化せるかっ!んな白髪他にいるわけねーだろっ」

背が低めできつい顔立ちをしている他校の生徒に怒られ、

「相変わらずお前はアホだな」

背中までの黒い長髪の、さらに別の高校の生徒に呆れられていた。

二人とも胴着を着ていたから明らかに大会の出場者だという以前に、部員たちには見覚えがある顔だった。

変顔作戦が失敗して坂田は面倒くさそうに二人を見る。

「ヅラに“低”杉じゃねーか、久しぶりぃ」

「ヅラじゃない桂だ!」

「誰がチビだ、殺すぞ!」

どうやら知り合いのようだが銀時が“ここ”にいることを知らなかったようで、怒ったあとに信じられないという顔で言った。

「てめー……剣道部に入ったのか?」

「見れば分かるだろーが」

「例のおかしな商売で、助っ人に入ったとかじゃなく、か?」

「……なりゆきで……」

その辺も誤魔化そうとしてみたが、二人には通用しなかった。

桂が何かに気付いて高杉の腕を小突くと、高杉のほうも気付いたようで呆れた顔をする。

二人の視線の先に居たのは、離れたところで何事かと心配そうな顔の土方。

「相変わらずてめーの好みは分かりやすいな」

「私たちがあれほど誘ったのに無視しておいて……」

友情よりも恋愛、そんな坂田にがっかりしても、現状を考えたら喜びしかない。

二人はにやりと笑ったあと、

「まあいい。だったら銀時!俺とあたるまで絶対負けんじゃねーぞ!」

「ここにいるのだから腕は鈍っていないだろう。ちゃんと勝ち進んでこい」

そう言っていまいちやる気のなさそうな顔をしている坂田に発破をかける。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ