学園設定(補完)
□逆3Z−その3
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「……分かった」
「……分かった?」
「お前が本気なら、考えてやってもいいと思う」
「まじでかっ」
「ただし、お前、剣道部に入れ!」
「け、剣道部ぅぅ!?」
二人が通う学校にも実は剣道部があったが、土方は部活中の様子を覗いて顧問になるのは諦めた。
経験者も複数いたし頑張れば大会でも良いところまで行けそうだったが、それを彼らは望んでいないように見えたのだ。
みんなと楽しく部活がやれればいい。
それは近藤たちと過ごした高校生活で実体験したこと。
土方たちの場合は、それに“強くなりたい”という目標があったので、楽しくと同時に辛いことも我慢できたのだが、それを望んでいない生徒に強制はしたくない。
係わってしまうと口も手も出てしまいそうになるので放置していたのだが、坂田が剣道部に入ったら“強くなる”ことも目標にしてくれるんじゃないかと思った。
「俺が顧問になってやる。だからお前も……」
「無理無理無理。俺はもう辞めたんですぅ、いまさらそんな疲れることしたくありませんん」
名案をあっさり素気無く断られて土方は内心ショックだった。
“惚れてる”相手に言われたらもうちょっと考えてくれもいいんじゃないかと思う。
なので、土方のほうも弱みに付け込むようなことをせざるを得なかった。
「……なんだよ……いやなのかよ……」
わざとらしいぐらいのしょんぼり顔で悲しそうに言ってやったら、さすがに坂田のほうも罪悪感を覚えたらしい。
それに“ギャップに萌え”てくれるなら、こんな土方にも陥落してくれるかもしれない。
「…うぐ………わ、分かったよ!やればいんだろ!」
まんまとノセられてそう叫んだ坂田に、土方は内心でにやりとほくそ笑む。
不本意とドキドキを混ぜたような顔をしている坂田の頭を撫でて、嬉しそうに笑った。
「よしよし」
相変わらずの子供扱いに坂田は悔しく思いながら、それでもやっぱり嬉しくもある。
大人のやり口でしてやられた感が半端ないが、こんな顔をされたらすべて飲み込んで覚悟するしかなかった。
一方、自分という餌で純朴(?)な高校生を引っ掛けてしまったのに多少気が引けないわけでもないが、どちらにしろ在学中の生徒とどうにかなるつもりなど土方にはない。
卒業までに坂田の気が変わるかもしれないし、逆に土方のほうが坂田を可愛いと思えるようになるかもしれない。
それはそれでそのとき考えようと思うのだった。
その後、剣道では無名の高校がいきなり全国大会まで進出したり、純朴な高校生は思いのほか一途で全然諦めなかったり、むしろ諦めたのは教師のほうで三十路を超えるころに一緒に暮らすようになったりするのは、また別の話。
おわり
……のつもりだったんですが、“別の話”を少し書きます(笑)