原作設定(補完)

□その25
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※以下、土方(見た目、新八)、新八(見た目、土方)でご想像下さい。


元に戻るための試行錯誤、チャレンジを繰り返し30分後、二人は元のベンチに座って再び落ち込んでいた。

「……どうしますか、土方さん……」

「どうするもなにも……様子を見るしかないだろ」

「ええぇぇぇ!?僕、真選組の副長のフリなんて無理ですよっ!」

諦め気味の土方の発言に、新八は大慌てで叫ぶ。

自分は困ったときにこんな顔をしてるだな、なんて呑気なことを考えながら土方は言ってやった。

「とりあえず今日は非番だから大丈夫だし、どっちにしろ屯所には戻れねーんだ。総悟が俺のピンチを心待ちにしてるからな」

「あ、今日の占いですか?銀さんも笑ってましたよ」

当然銀時が見逃しているはずもなく、

「ぷふふっ、多串くんのことじゃん。副長さん大ピンチ」

と喜んでいたことを教えられて土方はイラッとするが、実際大ピンチに陥ってしまったので文句も言えない。

「今日は万事屋と会う予定だったから、俺も一緒に万事屋に行けばいいんじゃねーか?」

銀時の名前が出てきたことで、元よりそうしようと思っていたことを思い出した土方だったが、新八がちょっとモジモジしながら目を逸らす。

「………あの……そっちのフリも無理ですから……」

新八と神楽は二人が付き合っているのを知っているため、そんなふうに照れられると土方のほうも恥ずかしくなってしまう。

「あいつなら説明したら分かってくれんだろ」

「まあ…万事屋は割と有り得ないトラブルが多いですからね……信じてはくれると思いますけど……見た目が僕だけに銀さんも気まずいんじゃないですか?」

長い付き合いの従業員(未成年)の中に恋人の意識が入っているのだ。

土方はそれを自分に当てはめて総悟の中に銀時の意識が入っているのを想像してみて、かなり複雑な気持ちになってしまい、

「……仕方ねぇ。もしかしたらすぐ戻るかもしれねーし、今日はこのままお互いのフリをしよう。誰にも会わなきゃいいだろ」

そういう結論に達した。

とりあえずはそれが無難かと思った新八だったが、自分の懐に入れていたものを見て大事なことを思い出した。

「あ、でも、僕はこれを銀さんに届けないといけないんですよ。依頼品なんですけど、後で銀さんが依頼主に届けることになってて……」

そう言いながら新八が土方の懐から持っていったのは小さな箱のようなものが入った包み。

それを届けるのが仕事だというのなら、万事屋の激貧っぷりを知っている土方としては邪魔をするわけにはいかない。

溜め息をつきつつ、

「……分かった。俺は万事屋に戻る。お前はどこか部屋でも借りて泊まっておけ。金は使っていいから」

「えっ!?じゃ、じゃあ、米を買っても……」

「それ持ってどこに泊まる気だよ」

「…そうですね…」

こんなときでも庶民的な新八なら財布を預けても安心だと思いながら、包みを受け取り新八と別れる土方だった。




それから20分後、重い足取りながら土方は万事屋に到着した。

自分から言い出しでもしない限り、新八の中に土方の意識が入っているなんて誰も想像だにしないだろうとは思う。

それでも上手く新八っぽく振舞えるかと思うとドキドキせずにはいられない。

万事屋に出入りするようになってからの記憶にある限りの“新八”を思い出しながら、玄関を開けた。

「た、ただいま帰りました」

「おーう、お帰りぃ」

奥から銀時の声が聞えて、土方は深呼吸を2回して中へ入る。

部屋では銀時が相変わらずやる気のなさそうな態度でジャンプを読んでいた。


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