原作設定(補完)
□その25
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#246
作成:2016/10/24
徹夜で仕事を上げたばかりの土方は、屯所の食堂でぐったりしながらもテレビを見ながら朝食を取っていた。
今日はこのまま非番なので早く部屋に戻って一眠りしかったのだが、テレビから天気予報が聞えてきて視線を向ける。
銀時が好きだ好きだ言うもので、ついつい見るようになってしまった土方に、
「それでは結野アナのブラック星座占いでございます。今日一番ツイてないのは……おうし座のアナタです。今日は何をやってもうまくいきません。特にマヨラーでニコチン中毒の方、谷あり谷あり谷あり谷ありの下りっぱなしな1日になるでしょう」
余計に疲れる占い結果が下されてしまった。
嫌な顔をしている土方の隣に座っていた沖田が、
「土方さん、顔色が悪いですぜ。心配なんで今日は1日一緒にいてあげまさぁ」
しおらしいことを満面の笑顔で言ってきた。
その笑顔には“土方さんが酷い目にあう瞬間を見逃したくない”と書いてあったので、土方は吸っていた煙草を消して立ち上がる。
「必要ねぇ。今日は非番だ」
「お付き合いしやす」
「てめーは非番じゃねぇだろうがぁぁぁ!」
「…ちっ…」
残念そうに舌打ちする総悟を残して食堂を出た。
夕方まで寝てから出かけようと思っていたのだが仕方ない。素早く身支度を整えると近藤に後を頼んで出かけることにした。
秋晴れの爽やかな日差しは、土方の徹夜明けの疲れた身体を眠りへと誘う。
座ってしまったらそのまま寝てしまいそうだが、人目のあるところで真選組副長が居眠りとか体裁が悪すぎる。
どこかで休んで行こうかと考える中、浮かんだのは銀時の間抜け面だった。
『…いっそのことアイツんとこ行って寝させてもらったほうがいいんじゃねーか。ガキ共が居るならいきなり盛ることもねーだろうーし…』
そんなことを考えていたせいか、疲れていたせいか、人の気配が近付いてくるのに気付かなかった。
どんとぶつかり小柄な相手の体が弾き飛ばされそうになったのを、咄嗟に手を伸ばして助けようとする。
が、普段の土方だったら簡単に助けられただろうが徹夜明けだったために足元がふらつき、しかも踏ん張ろうにもその先が階段になっていたのだ。
相手の体を庇ったせいであちこちぶつけながら階段を転げ落ち、一番下の地面に叩きつけられたときに一瞬視界が真っ暗になった。
それでもすぐに意識を取り戻し、まず一緒に落ちてしまった相手を心配して声をかける。
「いてて……おい、大丈夫か?」
そう言った自分の声が何かおかしいと思ったら、
「…あ、はい……大丈夫です」
そう返してきた相手の声と姿に、今度は頭の中が真っ白になってしまった。
目の前で、ぽかんと口を開けているのは間違いなく“自分”だったからだ。
「俺ぇぇぇ!?」
「僕ぅぅぅ!?」
二人の叫び声が虚しく響き渡る。
公園のベンチに並んで座り、痛む身体を擦りながら落ち込む二人。
漫画や小説によくあるフィクションがまさか自分の身に起きるなんて信じがたいが、状況は“中身が入れ替わっている”としか思えない。
「……あの……土方さんなんですよね?」
「……ああ……てめーは万事屋んとこのメガネなんだよな?」
「はい」
疑問系なのも無理はない。自分が見ているのは“自分”であり、相手の姿は見えないのだから。
それでも聞き覚えのありすぎる声に相手の正体を知ることができた。
見ず知らずの人と入れ替わるよりは良かったかもしれないが、ちらりと“自分の姿”を見て溜め息をつく二人だった。
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