原作設定(補完)

□その25
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#244

作成:2016/10/22




土方は夢を見た。

黒いフードつきのコートを着た“絵に描いたような魔法使い”な風体のヤツに、

「お前は今日、好きと言われた相手を好きになってしまうだろう」

なんてことを言われた。

朝起きて、色恋事には無縁で必要ないと思っていただけに、呑気な夢を見たものだと思った。

たかが夢だと分かっていたが、何か嫌な感じがするなともやもやしながら朝食を食べに行くと、朝からハイテンションの近藤に、

「なんだかんだ言っても、やっぱり総悟と仲良しだよなっ!」

なんてつまらないことを言われて土方は眉を寄せる。

「……なんでそう思えるんだよ」

「だって昨日も一緒に遊んでたんだろ? 夜遅くに総悟がトシの部屋から上機嫌で出てきたぞ?」

「そんなわけ……ハッ!」

身に覚えのないことに反論しようとして、ふと夢のことを思い出した。

まさかな、と思いつつもそもそと食事を続けていたのだが、山崎がマヨネーズを片手に、

「副長〜、コレ忘れてますよ。副長の大好…」

「言うなぁ!!!」

“例の言葉”を言おうとしていたのを全力で止めていた。

体が勝手に反応したと言ってもいい。それを聞いてはいけない、と。

なのに屯所には“例の言葉”が溢れていて、

「副長、買ってきましたよ。副長の好…」きなマガジン。

「これ食いますか?副長好…」きな焼きそばパン。

「食堂に忘れてましたよ。副長の好…」な煙草。

言いかける隊士を次々に撃破し、みんなグルなんじゃないかと土方は疑心暗鬼な気分になってしまい、非番だったこともあって屯所を飛び出していた。

一人になって冷静さを取り戻せば、たかが夢のせいで何を取り乱しているんだと思えなくもない。

だが総悟に何かされたのだとしたら万が一ってこともあるかもしれないと警戒を続けていたら疲れてしまい、一息入れに立ち寄った団子屋で、

「あれ、多串くんじゃん。非番?」

会いたくないヤツに遭遇してしまった。

今日は銀時の軽口と嫌味にいちいち付き合う気にもなれず、休憩したら一人きりになれる場所にでも避難しようと思っていたのに、

「丁度良かった。俺さぁ、ずっと考えてたんだけど……お前のこと、好きみたいなんだよねぇ」

銀時がさらっととんでもないことを言い出した。

「…………あ?」

「だから、多串くんが好きなんだけど」

「なっ……」

悪い冗談だと怒鳴り付けてやりたかったのに、“例の言葉”を意識した途端に心臓がドキドキしはじめ、体温は急上昇。

顔が熱く真っ赤になってしまい、こんな反応したら誤解されると即座に判断した土方は、再び団子屋からも飛び出していた。

「あ、多串く……」

銀時がその背中を見送っていると、隠れていた沖田が団子を片手に姿を現した。

隣に座った沖田に、銀時は感心したように問いかける。

「沖田くんすげーね。何したの?」

「大したことしてませんぜ。睡眠学習した程度です」

土方への片想いをうっかり沖田に知られてしまい、大変な目に合うかと覚悟したのに協力してくれると言いだされたのだ。

理由は聞かなくてもあの笑顔を見れば分かる。土方が大変な目に遭うのが楽しいに違いない。

どんな“協力”になるのか心配していたが、告白しても怒鳴られるだけだろうと思っていたのになんだか可愛い反応をされてしまった。

睡眠学習ということは、一過性の暗示のようなものかもしれない。

「それじゃ気付いたら覚めちゃうんじゃないの」

「そうならないようにするのは旦那の仕事でさぁ」

もっともなことを言われて銀時は、土方の消えた方向へ視線を向ける。

幸い口先だけで生きてきたようなものなので、なんとか言い包めて土方をその気に方法を考えてニヤニヤする銀時だった。


 おわり



それだけ?…な話(笑)
だってネタメモにここまでしか書いてなかったんだもん。
1年前に考えた話なんかオチ付けられられないもん。

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