原作設定(補完)
□その25
5ページ/38ページ
「と言うわけでぇ、栗ご飯が食べたきゃ多串くんも手伝ってくださいっ」
栗を剥いている土方を見てみたいと思い、栗と包丁を手渡そうとした銀時だったが、
「え……」
思いの外、自信がなさそうな顔をされて手を引っ込める。
仕事においてはなんでも器用にこなす真選組の頭脳フォロ方十四フォローだったが、手先は意外と不器用なことを思い出したのだ。
「……無理か……」
そんな風に言われたら事実でもムッとしてしまうもので、
「バカにすんな、栗ぐれぇ」
土方は銀時の手から栗と包丁を奪い取ると、まるで一戦交えるかのような気合と顔つきで栗の皮むきに挑戦する。
が、敗戦は明らかだった。
ガチガチに緊張した手で栗の堅い皮に包丁を差し込もうとする様子に、新八は心配して慌てて声をかけるが、
「あああ、危ないです、土方さんっ」
「やめとけよ。真選組の副長さんが包丁で怪我したなんて知れたら笑いモンだぞ」
銀時に呆れた顔でそう言われて土方にも火が点いた。
「……やってやらぁ、見てろ!」
テーブルの上の栗をガッと一握り掴み部屋の、空いているところまで行くとそれを空中に放り投げた。
それと同時に腰にさげた剣を抜くと、目に止まらぬ速さで栗の周りに閃光を走らせる。その姿は某三刀流剣士に負けじと劣らない姿だった。
剣をカチリと鞘に収めると同時に栗が床に落ちた。
「おおおっ」
新八と神楽が目を輝かせて栗の元まで駆け寄ってくると、パカッと栗の皮が割れるのわくわくしながら見つめる。
しかし床に転がった栗に変化はなく、神楽が待ちきれずに突いてみるが栗が転がっただけだった。
「……剥けてませんよ」
二人が「?」という顔で土方を見ると、土方はすでにソファに座って煙草をふかしながら言った。
「できるわけねーだろ、漫画じゃあるめーし」
「期待させるんじゃねーヨ!!」
子供の期待を裏切るおちゃめな土方に、銀時は『可愛っ』と一人でノロケるのだった。
ひと通り騒ぎ終えてまた銀時が栗剥きに専念すると、見飽きた土方がソファの隣に座る。
そしてテーブルの上の剥き終えた栗を一つ手にとり、
「あーん」
と言いながら銀時の口元に運ぶ。
その仕草があまりにも可愛くてきゅんとしてしまい口を開けそうになってしまう銀時だったが、それをぐっと我慢した。
「…それ生だから、食えないから」
もちろんそんなことは承知の上の土方だったので、にっこりと笑ってもう一度やってみる。
「あ〜〜〜ん」
『…くっ……ものごっさ可愛いぃぃぃぃぃ!!』
あと一押しであーんとやってしまいそうになっている銀時に、
「食べたらお腹壊しますよ」
新八は冷静に言ってやるのだった。
そんな和気藹々な万事屋のある日でした。ちゃんちゃん。
おわり
……うん、オチは決めてなかったの。
家族イチャイチャを書きたかっただけの小ネタ集だったから(笑)