原作設定(補完)
□その25
2ページ/38ページ
20分後、チャイムも鳴らさずに万事屋に飛び込んできた土方は、急な来訪を驚く新八と神楽を無視し、知らない人にきょとんとする銀時の元まで行くと握り拳で殴りつける。
「この薄情もん!!てめーが仕掛けたことなら最後まで責任持てやコラァァァァ!!!」
椅子からひっくりかえった銀時にそう怒鳴ったものの、「誰?」と言われるのが怖くて土方はそのまま万事屋を出て行った。
ヤリ逃げ言い逃げの土方を新八たちは呆然と見送ってしまったが、背後で起き上がった銀時が、
「いたたたた……えぇぇ……なんで多串くん怒ってんの?」
「え……」
「銀ちゃん、思い出したアルか!?」
覚えていないはずの土方を“多串くん”と呼んだ銀時に、二人はぱーっと顔を輝かせる。
「良かったぁぁぁ、今度こそダメじゃないかと思ってました」
「さすがマヨラアル。次も頼むネ」
「だから、何が……」
勝手に盛り上がる二人に銀時が小さく苛立ったとき、目の前の電話が鳴り出して条件反射で取り上げる。
「はい、万事屋銀ちゃん」
『旦那、俺ですけど分かりやすか?』
「沖田くん?」
『土方さんがそっちに行きやす…って教えようかと思ったんですが遅かったみてーですね』
名前を呼ばれたことで沖田も理解したらしく、半笑いで説明してくれた。
『すみません、旦那との企みは全部バレやした』
「……どれが?……」
『全部でさぁ』
「な、何してくれちゃってんのぉぉぉ!!だからアイツあんなに怒ってたんだろがぁぁ!!」
『俺の所為にしないでくだせぇ。記憶喪失になる旦那が悪いんでさぁ』
という沖田の罪の擦り付けは銀時には聞えていなかった。
最後まで聞く前に受話器を放り出して部屋を飛び出した銀時に、残された子供たちは溜め息をつくのだった。
万事屋から逃げてきた土方は沖田の待つ屯所にも帰る気になれず、ふらりと足を向けたのがいつも待ち合わせに使っていた公園。
ほとんどは夜だったが、ごく稀に土方が1日休みのときは昼間にも来ることがあった。
銀時は全然平気そうだったが、土方はそんな“普通のデート”みたいなことが気恥ずかしくてドキドキしていたことを思い出す。
ついつい10分前行動をしてしまう土方に、遅れてもいないのに銀時は走ってきて済まなそうな顔で謝るのだ。
そんなことを思い出していたら背後からにゅーっと伸びてきた腕が土方を抱き締めた。
「多串くん…あの…ホントにすみませんでした」
いつになく気弱な物言いに、公園を往来する人に見られているというのに土方は腕を振り解かなかった。
一時はこんな風にされることも名前を呼ばれることも諦めたのに、と胸が痛くなる。
「……何がだよ……」
「全部……騙してごめん、忘れてごめん」
記憶喪失は仕方ないにしろ、騙されていたことよりも土方にはショックなことがあった。
「……何で言わなかったんだよ」
「あ?」
「んなこといつまでも黙ってるなんててめーらしくねーだろ」
付き合うことになってからでも「本当はずっと好きだったんだ」と白状してくれたら、ムカつくよりも嬉しくなったんじゃないかと思う。
そんな大事なことを隠し通せる性格じゃないと思っていたのに、ずっと隠されていたことがショックだった。
銀時は核心をついてくる土方に、拗ねるように答える。
「……本当は何度も考えたんだよ……俺なんかがこんなこと企まなきゃ、モテモテの副長さんはよりどりみどりで女を選べるんだし? 白状して嫌われるの多串くんのためかもしんまいって……」
それは少し前に土方が考えていたことと同じだった。
自分のせいだと諦めようとした気持ち。それが同じなら、諦め切れなかった気持ちも同じかもしれない。
「じゃあ何で言わなかったんだよ」
「……だ、だって……まさかお前が俺を好きになってくれるとか……嬉しすぎて手放したくなかったんだもん……」
真っ赤になってそう呟く銀時に、土方は内心で小さく笑う。ほら、やっぱり同じだ。
全部白状してしまった以上、再度怒られるのを覚悟しているらしい銀時に言ってやった。
「だったら、ちゃんと最後まで責任とりやがれ」
「まじでか!! いいの!?」
「騙されて男と付き合ってたなんて真選組副長の恥だからな。俺がてめーに愛想尽かすまで、つ……付き合ってやらあ」
ツンとデレる土方に、銀時は満面の笑みを浮かべる。
「分かった!責任とって嫁に貰……」
「それは断る!!」
「ええぇぇぇ」
土方が土方らしく怒っていることを喜ぶ銀時に、悩んでいたことが吹き飛んですっきりする土方だった。
おわり
オチは全然考えていなかったので、無理矢理オチつけた感じになってしまいました。
展開はいつもどおりなので、「あれ?他でも同じオチにしなかったか?」という気持ちでいっぱいです。
全然進まない補完作業で絶望しないことも願います(笑)