原作設定(補完)
□その25
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分かったけれど銀時にはとても心外なことだった。
「………」
黙ったまま土方の前まで行き、隣に座ると手を伸ばす。
逃げようとしない土方の頬に触れ……ぎゅむーっと引っ張ってやった。
「ひでででっ! へめー、はにする……」
「体が目当てだぁぁ? だったらさっさとやっとるわぁぁっ!! 誰のために1年我慢してきたと思ってんですかコノヤロー!!」
銀時の真剣だけどちょっぴり情けない主張に、土方はこの1年を振り返ってみる。
告白されて付き合っても良いと答えたら大喜びした銀時。
スキンシップは割りと多目だったが、いちいち嬉しそうだった銀時。
初めての外泊のお誘いは4ヶ月後だったし、何度断っても変わらずに楽しそうに付き合ってくれた銀時。
“付き合うの止めたほうがいいかもしれない”なんて言われてカッとなってしまったが、銀時を信じたい気持ちもあった。
恐る恐る確認する土方に、
「……本当に好きなのか?」
「好きに決まってんだろうが。やりたくねーならそれでもいいよ。おめーと一緒にいられんなら俺はそれでいい」
改めて口にすると気恥ずかしい気持ちを打ち明けたら、ぎゅーっと抱き付いてくれた。
そんなことで機嫌が直る自分が単純だと思いつつ、銀時も抱き締め返してやる。
「…ごめん…」
「それはいいけど……ずっとそんなこと考えてたのか? 1年も? お前らしくなくね?」
仕事でもプライベートでも、割とあっさりきっぱりと物事に結論を出し、悩み事はいつまでも引きずらないタイプに見えた。
土方は顔を上げないままボソボソと答える。
「………お前と付き合うこと近藤さんに報告しに行ったら…」
「……行ったの?……」
「? ダメだったか?」
「……いや、うん……全然、かまわないけど……」
土方と付き合うことになって、それをどうやって新八や神楽に報告したものかと悩んだ銀時に対し、土方はド直球だったようだ。
+++
「よ、万事屋と付き合う? 本気かトシっ」
「ああ。一応あんたには言っとこうかと…」
ガラッ
「話は聞きやした」
「なんで聞いてんだ!!」
「土方さん、旦那と“そういう関係”になるのは時間をかけたほうがいいですぜぃ」
「……なんでだよ」
「あの旦那のことだからあまりにも女にモテなくて、土方さんでも可愛く見えちまっただけに決まってまさぁ」
「…そ、そんなことは…」
「ありやす。ヤラせてくれるなら誰でも良いって思ってる違いねーですよ」
「…い、いくらアイツでも…」
「だからジラして様子を見たほうがいいですぜぃ、って言ってるんでさぁ」
「…………」
+++
沖田の顔が珍しく真剣だったことと、近藤の心配そうな顔を見て、そうかもしれないと思ってしまった土方は、銀時の誘いに頷けなくなってしまって今に至ったのである。
『あのくそがきぃぃいいい!!』
銀時には、影で笑っている沖田の笑顔が目に浮かんでいた。
沖田に踊らされて1年我慢させられたが、今、目の前に居る土方は、お互いの気持ちを確かめ合って嬉しそうな顔をしているので、まぁいいか、と思えてしまう。
そうなると、二人きりの部屋で何だか雰囲気も良いし、ムラムラした銀時が土方に手を伸ばしてみた。
「…多串くん…」
「……」
土方も逃げようとせず、イチャイチャできるかと期待した銀時だったが、
「土方さんっ! 賊が侵入したそうでさぁ!……あれ、旦那」
バーンと襖を開けて沖田が入って来ると、あせった土方に突き飛ばされてしまう。
「ぞ、賊ならコイツだから心配すんなっ」
「……そうですかぃ。でも隊士たちが大騒ぎなんで収めてきたほうがいいですぜぃ」
「お、おう!」
そう言って土方は慌てて部屋を飛び出してしまい、部屋の真ん中に転がされたままの銀時は、にや〜〜りと笑う沖田にまた邪魔をされたことを知るのだった。
おまけ
数日後、土方の非番に今度こそと誘ってみたら、今度はちゃんと承諾してくれた。
「……ホントに…いいのか?」
が、さんざん我慢させらたせいで、イザとなると躊躇ってしまう銀時に、
「俺も我慢してたんだっつーの」
土方が笑ってそう言うので、沖田のせいではあったが、1年も待った甲斐があったなと思う単純な銀時だった。
おわり
無理矢理伸ばしてみましたが、相変わらずなんてことない話でしたね。
だけど1年って(笑)
銀さん、どんだけ土方のこと好きなのよ。ひひ。