原作設定(補完)
□その25
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#248
作成:2016/10/31
土方十四郎が目を覚ましたとき、部屋はまだ真っ暗だったが肌を刺すような寒さが早朝間近だと分かった。
開けた目をすぐ閉じ、薄い布団の中で身体を縮ませる。
つい最近まで暖かかったのに急に冷え込むようになってしまったため、布団を冬物に替えていなかったせいで布団の中なのに肌寒い。
おまけにひどい頭痛と吐き気がする。二日酔いだ。
原因とその後のトラブルを思い出して、土方は眉間にシワを寄せた。
昨夜は久し振りの休みで銀時と会い酒を飲んでいたのだが、お互い酔ったせいでつまらない口喧嘩が本気の喧嘩になってしまったのだ。
その後の記憶がはっきりしていないが、あのまま分かれて屯所まで戻ってきたのだろう。
銀時と一緒だったらこんな寒い思いをしないで済んだのに、と思うとムカついて、
「……ばーか、寒いじゃねーか、クソ天パー……」
なんてつぶやいたら、
「誰がバカですかコノヤロー」
という銀時の声が聞えて、土方は布団から飛び起きて辺りを見回す。
よーく目を凝らして見るとここは屯所の自分の部屋ではなく、万事屋だということが分かった。
となると聞えた銀時の声は幻聴などではなく、隣に別な布団を敷いて寝ている本人の声だった。
「……なんで……」
喧嘩をして別れたはずなのに万事屋に居るんだ、という意味で呟いた土方に銀時はちゃんと答えてくれる。
「フラフラの足取りで道端にヘタリ込んでるから、仕方なくここに連れてきたんだよ」
「……なんで……」
今度は、じゃあなんで別々の布団に寝てんだ、という意味だったのだが銀時は答える。
「お前が布団は別にしろって言い張るから敷いてやったんですよ。夏用しかねーって言ってんのに、別にいいってそっちに寝たんだし」
銀時の言い方は素っ気なくて、喧嘩したことを引きずっているんだろうと分かったけれど、土方は立ち上がって銀時のところまで行くと布団に潜り込んだ。
喧嘩をしたのにちゃんと帰れるか心配してくれたことや、万事屋に連れ帰って布団を敷いてくれたことが嬉しい。
なにより、銀時が側にいると分かったら余計に寒さが身に染みた。
「なに……」
「ごめん」
ぎゅーっと抱きつきながら先手必勝で謝る土方に、銀時が怯んだのが分かる。
「…な、何が悪いか覚えてんですか」
「ない。けど、ごめん」
土方がやけに素直な理由を、自分に抱きついてぬくぬくしている様子で気付いた銀時が訝しげに、
「寒いからとりあえず謝っとけ、ってんじゃないだろうなコノヤロー」
なんて聞いてくるので、ギクッとしながらもシラを切ってみる。
「…………んなことねー」
「間が長げーよ。なんだよ、俺は湯たんぽ変わりですか」
拗ねる銀時が可愛いと思いながら、土方はちゃんとフォローするのも忘れない。
「俺はこの湯たんぽじゃねーとぐっすり眠れねーんだよ」
べったりくっついてそんなことを言われ意地を張れるほど銀時に我慢強くないため、
「……しょ、しょーがねーなぁ……」
なんて言いながら土方を温めるようにしっかりと抱き締めてくれた。
喧嘩したことなんて忘れて嬉しそうにしている銀時に、土方もようやく安心できて、夜が開けて帰るまでの短い時間を堪能するのだった。
おわり
今朝布団の中で「すっかり寒くなったなぁ」なんて思いながら考えたネタです。
昨日書いた#245の最後の展開と丸カブリですが、まあいいか。
いつも同じような話書いてるしね、うん(笑)