原作設定(補完)
□その25
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銀時の話を聞いてむすーっと不機嫌そうな顔をしている新八……ではなく土方を、銀時は嬉しそうに見ている。
それにまた腹が立って、土方は八つ当たりをするのだった。
「知ってて黙ってるなんて悪趣味だぞてめー!」
「多串くんだって入れ替わったの黙ってたじゃん」
「こんな嘘みてーなこと言えるわけねーだろっ」
「えぇぇぇ、心外ぃぃぃ。銀さん、多串くんの言うことなら何でも信用してるのにぃぃ」
そう言われればそうかもしれないが、ふざけた物言いとにやけた顔がからかっているようにしか思えない。
「……面白がってたくせに」
「じゃあ多串くんは、俺と…沖田くんが入れ替わってるのに気付いたら、黙ってて面白がったりしねーの?」
「するに決まってんだろ!」
開き直って偉そうに言い切った土方に、銀時はやっぱり嬉しそうだった。
悔しいけれどバレて良かったんだと思う。
見た目はこんなだけれど、銀時はちゃんと土方として接してくれているのだから。
「バレたんだから、泊まってくだろ?」
「……てめー、まさか……」
「何考えてんですか。見ず知らずの家に泊まるよりは、ここに泊まったほうが休まるだろうが」
怪しむ土方に、銀時は至極もっともなことを言い返してきた。
確かに、お妙にバレないかとヒヤヒヤしながら新八の身代わりをするよりは、気兼ねのしないここに居るほうが楽だろう。
返事はしなかったが顔を見て了承したと受け取った銀時は、ご飯も作ってもてなしてくれた。
予定とは違っていたが銀時と二人でのんびりすることができて満足だった土方も、和室に敷かれた二客の布団を見て寂しくなる。
この家で別々の布団に寝るなんてことが初めてだったからだ。
だからといってこの姿で一緒に寝るわけにもいかず、銀時が風呂から上がってくる前に先に布団に入って寝たフリをする。
だが、部屋に戻ってきた銀時が何も言わずに隣の布団で大人しくしているものだから、逆に切なくなってきてしまった。
本当だったら銀時のもふもふとした髪の感触と体温を感じながら寝れたはずだったのに。
そう思ったら、
「……そっち行っていいか」
なんて言い出した土方に、起きていた銀時が吹き出す。
「どーぞ」
布団をめくって招き入れてくれる銀時に、気恥ずかしそうに従う土方だったが、ちゃんと釘は刺しておいた。
「直接触ったら殺すからな」
「多串くんは触り放題なのに?」
見た目が新八で手出しを躊躇う銀時と違い、土方のほうは銀時にいつも通りに甘えることができる。
それにこう見えて抱き合って眠るのが好きなのを知っている銀時にそう言われ、新八の体でそれはしないほうが良いかと悩む土方に、銀時は仕方ないという顔で布団の上からぎゅっと抱き締めてやった。
ちょっと物足りなくはあるが土方は安心したように眠りにつく。
ずっと忙しくてきっと今日の非番のために睡眠時間も削っていただろう土方が、安らかに眠れるならとムラムラする気持ちをぐっと抑えて銀時も後に続いた。
翌朝、銀時は叫び声で目が覚める。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!! ぎ、ぎぎ、銀さんんんんん!?」
どうやら元に戻ることができた二人だったが、それならそれで昨夜のまま“土方を抱き締めて寝た”状況は、新八には恐怖だった。
銀時を突き飛ばして起き上がり、
「……ぎ、銀さん、まさか……あ、良かった、服着てる」
なんて心底ホッとしている新八に、銀時は寝惚けながらも問いかける。
「当たり前ですぅぅぅ……つーか、お前が戻ったってことは、多串くんは今どこに居んの?」
「あ、土方さんお疲れみたいだったんで、駅前のちょっと良いホテルに泊まってみました」
「……泊まってみたかっただけだろうが」
「ふかふかのベッドって気持ち良いですね」
初めての体験だったようで嬉しそうな新八に、だったら土方もゆったりしているだろうと思うと銀時も嬉しい。
きっと電話がかかってくるだろうから、改めてデートの約束でもしようと思うのだった。
おわり
オチが……考えてなかったのです。土方で始まって銀さんで終わってしまいました。
入れ替わりは楽しいなぁ……ベタだけどもね!