原作設定(補完)

□その25
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「お使いご苦労さん」

俺の一大事に呑気にジャンプなんか読みやがって、と憎らしく思いつつも、久し振りに会えたのはやっぱり嬉しい。

なのにこんな姿で触れることもできないなんて。

「ぱっつぁん?どうした?」

落ち込んでいたら銀時に声をかけられて、自分が新八の姿をしていることを改めて思い知らされた土方は、慌てて用件を伝えた。

「な、なんでもない…です。これ、預かってきたんですけど、実は階段から落ちてしまって……」

中身が何なのか新八から聞いていないが、ここへ来る途中に箱がへこんでいるのに気付いて中身が心配になった土方だったが、

「あ?大丈夫かよ」

「は、はい。でも箱が……」

「じゃなくて、お前は?怪我とかしてねーか?」

「……大丈夫です」

思いの外従業員……いや、家族思いな銀時にドキリとさせられる。

土方の前では割と素直じゃない銀時だったが、新八と神楽にはこんな感じに接するんだと初めて知った。

「こっちも大丈夫だろ、割れ物じゃねーし」

そう言って銀時は包みを懐に入れ、また時間があるのかジャンプの続きを読み出す。

そうすると土方は急に居心地が悪くなった。

土方が来ているときは新八は気を使っていろいろ話しかけてきてくれるのだが、銀時と二人のときにどんな会話をしているのかは知らない。

ソファに座ってしまうと余計に身動きが取れなくなりそうだと躊躇っていると、大事なことを思い出した。

こんな姿になってしまったので、今日会うはずの予定をキャンセルしなくてはならなかったのだ。

「あ……途中で…土方さんに会って、今日は仕事で会えない、って伝えてくれって言われました」

「あ、そう」

残念がるだろうと思っていたのに銀時の返事はあっさり……というか、ジャンプから目すら上げずむしろどうでもいい感じにすら聞こえる。

そんな銀時の態度に、土方は黙って台所へ向かった。

『なんだよ、久し振りなのに残念じゃねーのかよっ』

隣に山崎でも居たら八つ当たりで二、三発なぐってやりたいぐらいの気持ちだったが、銀時の居る部屋からブツブツ言っているような声が聞えてこっそり覗いてみた。

するとジャンプを読んでいたはずの銀時は、机に上半身をだらーっと伸ばしてふて腐れている様子。

「……どんだけ仕事大事なんだよ……銀さんだって我慢の限界だっつーの……ちぇーっ……」

どうやら新八の前だからと平気なフリをしていただけのようだ。

『……ったく素直じゃねーな……』

なんて嬉しくなってしまう土方も素直じゃないほうだったので、こんな姿をしているときぐらい銀時に優しくしてやっても良い気分になった。

いつもは恥ずかしくてできないので、

「ぎ、銀さん。これでも飲んで元気出してください」

と冷蔵庫に入っていたいちご牛乳を持っていってやった。

新八の足音が聞えた瞬間に身体を起こして何事もなかったような素振りの銀時だったが、そんなことを言われて慌てて言い訳する。

「べ、別に、元気だからね、がっかりなんかしてねーよっ。ああ、やっぱり仕事前のいちご牛乳は最高だなぁ!」

受け取ったいちご牛乳を動揺しながら一気飲みする銀時に、土方はついつい笑ってしまった。

銀時がそんな新八(土方)を眉間にシワを寄せてじーっと見つめるので、もしかしてバレたのかとドキドキした土方だったが、

「なんかお前……」

「な、なんです?」

「……なんか今日、可愛くね?」

「はあ?」

「……気のせいか。いつもどおりのダメガネだよな、うん」

ボリボリと頭を掻いて立ち上がる銀時に、何かもやもやした気持ちになった。

どうやら出かける時間だったらしく、身支度を整えて銀時は玄関へ向かう。

「んじゃ、行ってくる」

「…い、いってらっしゃい」

銀時相手に使ったことがない言葉に土方は気恥ずかしくなりながらも、ひとまずなんとか乗り切ったと安心するのだった。


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