原作設定(補完)

□その25
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#243

作成:2016/10/20




「邪魔するぞ」

「土方さん、いらっしゃい」

「また来たアルか、警察も暇ネ」

「……てめーらほどじゃねーけどな」

「あははは、暇具合なら負けませんよ」

平日の昼間、非番の日に万事屋にやってくるようになった土方と、それを迎える新八と神楽のほのぼの会話を聞きながら銀時は内心ほっこりしていた。

『うちの子達はホントに適応力旺盛で、あっさり俺たちが付き合ってるの受け入れちゃったもんなぁ』

なんて思っていると土方がじーっと自分を見つめているのに気付く。もとい、自分の手元を見ている。

「なんだコレ」

「栗?」

「見れば分かる!なんでこんなにたくさんの栗が……」

土方が驚くほどの大量の生栗が万事屋のテーブルに積まれていて、銀時はその皮を剥いているところだったのだ。

「ババアが客から山ほどもらったんだよ。剥いたら半分くれるっていうからさ」

そう言いながら小さい包丁で器用に剥いているのを興味深そうに見つめている土方。

銀時の隣では新八も、銀時ほどではないが地味にコツコツ剥いているし、神楽は……テーブルの隅に無残な残骸となった栗が置いてあったので、失敗してふてくされて定春にもふもふしている。

栗なんて茹でたものをほじって食べるか、料理に入っているものを食べるぐらいしかしたことがない土方には、こんなに一生懸命になっている銀時が……哀れだった。

「……なんか失礼なこと考えてね?」

「ない。それにしても、これの半分もどうすんだ」

さきほどの話だとこの大量の栗の半分を貰えることになっているらしいが、こんなに貰ってどうするんだという素朴な疑問だったのだが、

「…これで半分」

「あ?」

「ババアの分はもう剥いた。これがうちの分」

なんて答えられ、改めてテーブルを埋め尽くす栗を見て問いかける。

「………どうすんだよ」

だがそれは余計な心配だったようで、銀時は目を輝かせ、

「モンブラァンとか甘露煮ぃとかマロ〜ングラァッセとか」

良い発音でうっとりとしながら教えてくれた。

土方はそれだけで口の中が甘くなった気がする。

「…みんな菓子じゃねぇか」

「だろ〜。もう銀さん頑張って作っちゃうよ」

銀時の料理の腕前がなかなかなのは知っているため、新八と神楽も楽しみにしているようだったが、土方は少し寂しくなった。

甘い物が苦手なので、作ったものを分けて貰っても喜んでやることができないからだ。

土方がそう思っていることに気付いたのか、銀時が思い出したように言う。

「……あ、栗ご飯なら甘くねぇか」

それを聞いた土方がぱっと嬉しそうな顔をした。

甘く味付けしたものは苦手だが、栗ご飯なら栗のホクホク感だけを残して自然な味を楽しめるし、銀時たちと一緒に味わうことができる。

『どうせマヨ味にしちゃうくせに』

と思いながら、銀時も栗ご飯を美味そうに食べる土方を見たいと思うのだった。



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