原作設定(補完)
□その25
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万事屋に“十四郎が居る”というのが自然になったころ、朝食の席で新八が思い出したように言った。
「あ、そういえばひじ………と、十四郎は何歳になったんですか?」
家族になったのだから“土方さん”はおかしいだろうと、“十四郎”と呼ぶための練習中の新八はいまさらなことを聞く。
そういえば聞いてなかったし言ってなかった。
十四郎が小さい手でお徳用マヨをしっかり掴んでご飯に盛りながら答える。
「8つだ」
「じゃあ、学校に行かないとダメですね」
もっともなことを言う新八に全員が手を止めた。
“子供は学校に通うもの”。
確かにもっともだが、中身が“土方十四郎”だと思うと銀時は苦笑いだ。
「おまえねー。“十四郎”が子供に混じって学校に通うなんてつまんねーだろ。な?とうし……」
が、同意を求めるように十四郎を見ると、マヨを掴んだままモジモジしている十四郎が居た。
嫌がっているというよりむしろ、
「とうしろは行きたいみたいアル」
だと、神楽は代弁してくれた。
「…い、行きたいのか?」
「……俺……兄さんが亡くなるまでしか学校……田舎だったから寺子屋みたいなちっさい所に通っただけだったから……ちゃんとしか学校とか行ってみてえ」
グレて暴れまわってそれで剣の腕は磨けたけれど、近藤の側で役にたつ人間になるためにつけた知識はすべて独学だった。
だからちゃんと学ぶために学校へ通ってみたい。
この姿では小学校からやり直すしかなく、小学校で学ぶことは退屈だろうけれど、それはそれで“肥やし”になる。
十四郎が行きたいというなら反対する理由はなかった。
「……分かった」
銀時が了承すると十四郎がぱーっと嬉しそうな顔をする。
その可愛い笑顔に三人ともきゅんとしてしまうのだった。
そして学校へ行くことになった初日。
「ほら、弁当」
銀時が差し出した包み。
いつもより早い時間に朝食の準備を始めたと思ったら、どうやらコレのためらしい。
「…あ、ありがとう……でも……」
嬉しいけれど、これから毎日のことだと考えれば面倒じゃないかと躊躇う十四郎に、
「子供は愛情たっぷりの弁当を持っていくものですぅぅぅ」
銀時が照れながらそう言うので、十四郎は言葉に甘えることにした。
それから学校へ通うようになった十四郎は、勉強も、普通の子供のフリをして遊ぶことも、そして弁当の中身も楽しみになった。
昼休みに十四郎の弁当を見た子供が言う。
「十四郎の弁当、ときどきおかしいよな」
彩りにも手の込んだ弁当だったり、普通で地味な弁当だったり、今日みたいに白飯に生卵がついているだけだったり。
銀時が十四郎に弁当を作ってやるのを羨ましがって、新八と神楽も、それぞれの技量で作ってくれているのだ。
卵を割りながら照れたように答え、
「……ぎ……“父ちゃん”と“にいちゃん”と“ねえちゃん”が作ってくれてるんだ」
”家族“からの愛情弁当に喜ぶ十四郎だった。
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