原作設定(補完)
□その25
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翌日、午前中は仕事がないというので四人で買い物にでかけた。
十四郎が万事屋で生活するために必要な物を買いに行くと言う。
そんなに金を使わせるわけにいかないと遠慮する十四郎だったが、
「大丈夫ですよ。この日のために、銀さんに内緒でへそくりしてたんですから」
万事屋の財布を握る新八がそう言ってくれた。
それに大人げなく反論したのは銀時のほうで、
「まじでか!おまっ、いつのまにっ!毎月ピンチだって言って俺の甘味をケチったくせに!」
「土方さんがどんな状態で戻ってきてもいいようにって、考えないほうがおかしいんですよ」
「…ぐっ…」
新八にやり込められている銀時を見て、十四郎は『やっぱりマダオなんだなぁ』と呆れながら嬉しくなるのだった。
へそくりで着る物などを買ってもらった十四郎は、両親を亡くしてから久し振りに“子供っぽい”わくわくした気持ちになり、和室に広げてみる。
ひと通り眺めて満足したあと、このまま広げておくわけにはいかないなと、和室の見回した。
まだたくさんはないのでタンスの一段でもあれば十分収納できそうだ。
銀時たちは午後から仕事に行くのでバタバタしていたので、
「銀時ぃ、タンスの一番下の引き出し使っていいか?」
そう声をかけながら引き出しを開けようとしたとき、ものすごいスピードで銀時が部屋に飛び込んできた。
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」
そう叫んで十四郎が出しかけた引き出しを、バンッと元に戻される。
「!?」
「こ、このタンスじゃちょっと小さいだろっ!」
「……まだ少ないから大丈夫だ」
「何言ってんですか。これからまだまだ増えるんだから、十四郎用のを買ってきてやるから!遠慮しなくていいんだぞ!なっ!?」
「……うん。どうもな」
必死の説得に十四郎が嬉しそうに笑うので、銀時はホッと息をつく。
今日の仕事に子供は連れていけないからと、十四郎は定春と留守番することにして三人を見送る。
「十四郎、良い子で留守番してろよ」
「銀時、しっかり働いてこいよ」
なんてやりとりをしながら笑顔で見送ったあと、十四郎は眉間にシワを寄せて和室を振り返った。
「相変わらず誤魔化し方がワザとらしーんだよ、あいつは」
昔からロクでもないことばかりしているくせに、それを隠すことがヘタだった銀時。
十四郎は和室に戻ると、銀時が必死に隠したタンスの一番下の引き出しを開けた。
中には黒い、銀時がいつも着ているインナーが何枚も入っていて、一瞬気が削がれる。
が、もちろんこんなものであせったわけじゃないだろうと、手をつっこんで服をめくっていたら、懐かしい感触が指に触れた。
銀時の安物だろうインナーとは手触りの違う、厚手の生地の洋服がきれいに畳まれてしまわれていた。
真選組の隊服。誰の物なのかなんて考えなくても分かる。
取り出した隊服にぽたぽたと水滴が落ちた。
「……こんなもん大事にしまってやがったのか……やることがいちいちクサイんだよ……ばーか……」
十四郎は涙を隠すように隊服を抱き締めて、本心とは裏腹な悪態をつくのだった。
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