原作設定(補完)

□その24
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「やっぱさっきの、聞きてーんだけど」

「…さっきの?」

「“なんで抵抗しねーの?”」

それを聞かれたときの状況を思い出し、土方の顔がパッと赤く染まった。

記憶の戻った銀時に愚弄されたのかと腹が立ち、悲しくすらなったが、“好きだ”と告白された今となって思えば、唇や指先の熱さは愛情だったわけで。

あの熱さかが嬉しくて心地よくて、でも記憶が戻ってしまったらもうそれを感じることができないと思って、抵抗しなかった理由。

「…そ…れは……」

真っ赤になって口ごもる土方に最後まで言わせたいドS心もあるけれど、それよりも聞きたい大切なことがあった。

俯き加減の銀時が迫ってくる気配に、咄嗟に身を後ろに引いたもののそこは壁だった。

背中を壁に付け、両脇は銀時の腕で塞がれて逃げ道のない状態……は、記憶のない銀時と始めてキスをしたときと同じ。

そして記憶の戻った銀時も、同じように土方の肩に額を乗せ、

「…多串くんも……記憶がない俺のほうが良いのか?」

聞えるか聞えないかぐらいの声でそう呟いた。

もちろんちゃんと聞えていた土方だったが、質問の意図が分からずちょっと首を傾げる。

その角度から見た銀時の横顔は明らかに拗ねていて、ようやく察した。

きっと新八たちから記憶喪失の間の銀時がどんな様子だったか、どんなに真面目だったかを聞き、“記憶喪失のままだったほうが良いってか!!”と拗ねていたに違いない。

そんなの、新八たちも本人を前にしているからそう言ったまでのことだ。

本当は土方と顔を合わせるたびに、

「銀さんの記憶戻りそうですか?」

とか、

「何やってるネ!早く銀ちゃんを元に戻すアル!」

なんて言っていたのだから。

そして土方も、記憶が戻ったこうして一緒に居られくなると思いながら、姿を見つければ嬉々として喧嘩を売りにくる銀時に会いたいと思っていた。

上下、立場、関係なくズケズケと言いたいことを言ってくる銀時と話すことは、イライラもしたけれどスッキリできて楽しかったのだ。

そんな土方たちの本心を知らず拗ねる銀時を見て、土方は笑った。

「ぶははっ! どっちが良いなんて……何年てめーと一緒にいると思ってんだ……くくくっ」

バカにしながら楽しそうに笑う土方の笑顔を、銀時は始めて自分に向けられているのを見た。

写真の中でしか、近藤たちの前でしか、見せてくれないと思っていた顔で笑っている。

言われた言葉の意味と一緒に、銀時の胸はきゅーんとときめく。

「……俺…で良いのか?」

もう1つの可能性。“記憶喪失じゃない銀時を好きなのか”

顔を上げた銀時の情けない表情に、まだ言うかと、

「てめーが良いに決まってんだろ」

そう答えたてやったら、銀時はようやく安心したように笑う。

そして、ものすごい至近距離で笑い合い見つめ合っていたら当然甘い空気が流れるもので。

どちらからともなく唇を重ねようとした瞬間、携帯カメラのシャッター音で我に返る。

二人揃って横を向くと、沖田がニヤニヤしながら携帯を構えて連写していた。

「な、何してんだ、総悟ぉぉぉ!!!」

即座に土方はそう怒鳴ったが、沖田のほうはしら〜っとした顔をしている。

「邪魔されたくねーんだったら場所を選んでいちゃついてくだせぇ」

「あ?」

「俺は屯所の周りでいちゃつくバカップルの証拠写真を撮っていただけでさぁ」

そう言われてよく見れば、土方が寄りかかっている壁は屯所の壁だった。

姿は見えないけれど大勢が壁の向こうで聞き耳を立てている気配を察し、土方は銀時の体をどんっと突き飛ばす。

それから、残されてはたまらない“証拠写真”を取り上げようと携帯に手を伸ばしたが、

「総悟っ、それ返……あ!コラァ!!」

ぴゅーーーっと逃げていく沖田を追いかけて、土方は屯所に入って行ってしまった。

甘味よりも甘いモノがあとちょっとで味わえるはずだったのに、それは小悪魔に邪魔されて消え去った。

咄嗟に、

「多串くんっ!」

と叫んでみたら、屯所の入口から土方がひょこっと顔を出す。

そしてちょっと頬を染め、

「…全部まるっと仕切り直すから…待ってろコラァ!」

そう言ってまた中に入って行った。

“記憶がない銀時”にしてくれたことを全部やり直してくれるつもりらしい土方と、恥ずかしそうな表情に、

『か、可愛ぃぃぃぃ!!!』

その場にしゃがみこんで悶絶する銀時だった。


 おわり



うーん…………うん、いつもどおりだね(笑)
自分でも説明不足は分かっているんですが、これ以上書こうとするとどんどん長くなる。
本当はもっと端折って切り捨てまくって、3回ぐらいで終わらせたかった(笑)
すみません、うちの銀さん、いつでも土方が好きで。
ワンパターンなのは私のせいじゃない。土方が好きすぎる銀さんのせいです。
銀時「そんな俺を好きすぎるお前のせいだろ!」
そうとも言う(笑)

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