原作設定(補完)

□その24
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居酒屋で酒を飲みながら、思い出したように土方が携帯を開き、

「今月の非番決まったぞ」

「ん」

予定を教えようとすると、銀時が醤油をつけた指先を割り箸の袋に構える。

書くものがないので仕方ないと思う当たり、二人とも良い感じに酔っ払っているようだ。

「10日と、18日、24日」

「りょーかい……つーか3日かよ!働きすぎじゃね?」

「いつもどおりだろ。時間が空いたら連絡する」

しぶしぶ納得して銀時が割り箸を懐にしまっていると、火照った顔を手で仰ぎながら土方が言った。

「しかし、もう10月なのに暑いな」

「え?もう10月だっけ?」

月が替わってもう3日も経つのにそんなことを言いだす銀時に、土方は冷たい視線を向ける。

「…お前な……社会人として暦ぐらいちゃんと把握しておけ。引きこもりかと思われるぞ」

「全然引きこもってませんんん、ちゃんと出かけてますぅぅ」

「パチとかパチとか……パチか?」

「俺のセリフを取るんじゃねーよ」

唇を尖らせて拗ねたフリをした銀時だったが、何かに気付いたようでぽつりと呟いた。

「…非番……10日だっけ?」

「ああ。…なんか予定あるか?」

「や、ないない、大丈夫」

土方が疑うような変な顔をしているから、銀時は内心の嬉しさをぐっと我慢した。

偶然で土方にそんなつもりはないと分かっているが、こっそり喜ぶぐらい良いんじゃないかと思うのだ。


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電話を切った土方は身なりを整えると部屋を飛び出し、

「山崎っ、車出せっ。近藤さん迎えに行くっ」

廊下で会った山崎を捕まえて、スピード違反ギリギリでスマイルまでパトカーを走らせた。

まだ飲み始めたばかりの近藤のテーブルに押しかけ懇願する。

「近藤さん、すまねぇ。やっぱり俺どうしても今日休みてぇ。屯所戻ってくれ!」

「お、おう」

「あら、もうお帰りになるんですか?じゃあこのドンペリはみんなで飲まさせていただきますね」

土方の勢いに負けてあっさり承諾する近藤に、お妙がドンペリ片手に全然残念そうじゃない顔で笑った。

金だけ払わされる近藤に申し訳ないと思うが、今日だけは譲れない。

先に店を出た土方はパトカーで待っている山崎に、

「近藤さん今来るから屯所戻れ」

「副長は…」

「俺はいい」

近藤のことを任せて、出かけた銀時がその辺をうろついてるかもしれないとかぶき町をキョロキョロしながら、土方は足早に歩き出す。




いつもの待ち合わせ場所で銀時はぼんやりとしていた。

土方は来ないのに、いつまでもこうしてても意味がないなと思い始めたとき、近付いてくる足音に顔を上げる

息を切らした土方が立っていて、驚く銀時に、

「多串くん……どうした?何かあっ…」

答える代わりにぎゅーっと抱き締めてやった。

『こんなときぐれーわがまま言えよ』

本当は寂しいと思ってるくせに何も言わない銀時に、そうさせているのは自分なのだと胸が苦しくなる。

だけど銀時が言わずに我慢しているのだから、そう言って責めるのは野暮だと思った。

土方のいきなりの行動に戸惑う銀時に、

「…多串くん?」

「……非番、変更が変更になったんだよ」

そう答えたら、一瞬きょとんとした顔をしてから嬉しそうに笑う。

いつでもこんな風に喜ばせてやりたいと思っているのに。

なので今更だが、機嫌良く歩き出した銀時に言ってやった。

「……遅れてきたお詫びになんでも奢ってやる……け、ケーキとか……」

それでようやく土方が今日が何の日か分かってるんだと気付いた銀時は、走ってきてくれたことも、抱き締めてくれたことも、全部自分のためかと思うと余計に嬉しくなってしまう。

「じゃあホールで買って二人で食べたい」

ようやく銀時らしい我が儘を言われ、甘い物が苦手な土方だったが叶えてやろうと思うのだった。


ハピバ、銀さん!


 おわり



なんかムダに長くなってしまった気がしてなりませんが……。
相変わらずなんてことない話ですみません。
お約束でベタな二人がイチャイチャするのが好きです。

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