原作設定(補完)

□その24
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銀時は真選組屯所にこっそり忍び込む……つもりだったのだが、割と顔と素性が知られている銀時だったのであっさりと中に入れてもらえた。

副長室の場所を聞いて向かいながら、ドキドキしているのが気恥ずかしくなったり。

『落ち着け、俺ぇぇぇ!ちょっと会うだけじゃん、試すだけじゃん!えっと……本心と逆になるんだから、嫌われてる風だったら嫌われてないってことだよな。ものごっさ嫌われてる風だったらものごっさ嫌われてないってことで……』

もやもや考えながら辿り着いた副長室の前で大きく深呼吸して、襖絵の前で中に話しかける。

「…あー……多串くん?」

「!? 万事屋!?」

声だけで分かってくれたとちょっぴり嬉しくなったが、“多串くん”と呼ぶのは銀時以外に居ないのだから分かって当然だった。

声はいつもと同じで元気そうなので、本題に入る。

「うん。話があんだけど……中に入っていいですかね」

「ちょ、ちょっと待てっ、今は……」

ダメだと言われる前に襖を開けた。

引きこもって雑務でもしていたのが大量の書類に囲まれた土方は、銀時の顔を見てぎょっとしたあと、ぱーっと笑顔になった。

そして駆け寄ってきて抱き付いてくる。

「万事屋っ、会いたかった」

『ええええぇぇぇぇ、熱烈歓迎ぃぃぃぃぃ!!?』

初めて自分に笑顔を向ける土方の熱い抱擁を受けて、銀時は絶望感を味わわされた。

『ものごっさ好かれてる風の逆はものごっさ嫌われてるってことで、ものごっさ嫌われてるを逆にしないってことはものごっさ嫌われてるってことで、ものごっさ嫌われてるからものごっさ好かれてる風なわけで……うがぁぁぁ!結局嫌われてるんじゃねーかぁぁぁ』

銀時の気持ちと同じじゃなくても、ちょっとぐらい好かれているんじゃないかと期待していた。

確かに会ってもいつも素っ気なかったけれど、それがそのまんま本心な態度だったなんて。

ショックで落ち込みそうな銀時だったが、ぎゅーーっと抱き付いたままの土方の体温に次第に落ち着かなくなってきた。

ずっとこうしたいと思っていた相手に抱きつかれているのだ。

これが本心じゃないと分かっていてもムラムラするのが男というもの……というか、ムラムラしなければ男が廃る……かもしれない。

『どうせ嫌われてるんだから何やっても同じじゃね? もう二度とこんなチャンス無くね?』

諦めにも似た気持ちが銀時を後押しする。

そろそろを腕を土方の背中に回し抱き締め返してやると、土方は顔をあげてにこっと笑った。

『か、可愛っ!』

好きな土方の体が腕の中にあり、可愛い顔が目の前にあったらやることは一つ。

ぐーっと近づけた唇が重なる直前、

「旦那ぁぁぁ!!ダメですぅぅぅぅ!!!」

バーンと襖を全開にして、そう叫んだ山崎が立っていた。

その途端、我に返ったらしい土方は顔を真っ赤にして銀時を突き飛ばすと、逃げるように副長室を出て行った。

入れ替わるようにやってきた沖田は不満そうな顔をしている。

「あーあ、なんで邪魔するんでぃ」

「ダメに決まってるでしょう! いくら両想いだったってバレたからって、副長が正気じゃないときにそれ以上のことは……」

「あ?」

邪魔されて突き飛ばさたまま凹んでいた銀時は、山崎の言葉にむくりと身体を起こす。

きょとんとしている銀時を見て、山崎もきょとんとしていた。

「え?」

「バレたって何が?」

「あれ? 本心が増徴された副長に会ってバレたんじゃ……」

山崎とは話が噛み合わないので銀時はネタの発祥地である沖田を見たら、にやにや〜〜っと楽しそうな顔をしている。

やられた。



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