原作設定(補完)
□その24
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#238
作成:2016/10/14
「今年は絶対に祝ってやる!仕事が終わったら絶対に行くから家でご馳走用意して待ってろ!」
「俺の誕生日なのに俺がご馳走用意するの?」
「家でゆっくり美味いもん食いたいんだよ」
そう宣言した土方は、当日夜9時に……テレビの向こうに居た。
『テロリスト10数名を取り囲むように真選組が配置されました。数日前に逮捕された仲間の解放を求めているらしく、持久戦になる見込みです』
遅い時間なのに報道人と野次馬が映る中、規制線が張られているため近寄れず遠目に真選組の隊服が固まっている。
カメラが追うのは真選組局長と、その隣に立っている副長。
銀時はテーブルに並べた料理をちらりと見てから溜め息をついた。
「こりゃ今日は無理かね」
仕事で予定が変更になることなんてよくあることだが、土方が力説していたので大丈夫かも、なんて期待してしまった。
土方が悪いわけでもないし、姿だけでも見れたのだから、と銀時は割と簡単に諦められるようになったことが悲しくもある。
現場の様子をずっと映しているテレビを見つめながら、銀時は小さく笑う。
カメラが追いかけるイケメン副長さんは、眉間にシワを寄せて厳しい顔をしていた。
こんな状況なのだから緊迫感があるのは当然だと思うが、銀時には土方がイライラしているように見えるのだ。
「…もしかして約束の時間過ぎてるせいか?」
“仕事なんだから仕方ねーだろ”が口癖の土方がそんなことを気にするはずがないか、と思ったとき、現場に動きがあった。
何やら集まって言葉を交わしたあと、緊張感が少し解けたような空気になる
アナウンサーの話によると、テロリストから食事を用意しろという要望が出て、真選組はそれに応じたらしい。
それを準備する間だけ一息つける、ということかもしれない。
このまま危ないことはなにもなく無事に片付けばいいのにな、と思いながら土方を見ていると、近藤に何か話しかけたあと携帯を取り出した。
何か重要な連絡でもするような真剣な顔をして携帯を耳に当てたとき、万事屋の電話が鳴り響く。
絶妙なタイミングだったが、まさかと思いつつテレビを見つめながら電話に出ると、
「…はい、万事屋銀ちゃん」
『俺だ』
そのまさかの土方の声が受話器から聞えてきて、“えぇぇぇぇ!?”とついテレビを凝視してしまった。
画面に映っている言いにくそうに顔をしかめている土方と同じく、
『…悪い。急な仕事で今日中には行けないかもしれねー』
いつもの覇気がない声でそう言った。
やっぱりイライラしていたのはそのせいだったかもしれない。
そして仕事中なのにこうやって電話をしてくるなんて、土方らしくないのが余計に嬉しくなった。
『…万事屋?』
「あ、うん、分かった」
『…悪いな…』
「いいよ……だから、んな難しい顔してねーでお仕事に集中しなさいよ」
『…あ!?…』
嬉しいのでついつい言ってしまったら、銀時の言葉の意味を察して土方が辺りを見回す……のがテレビに映っている。
夜目にも目立つ銀色の髪を見つける前に、報道人の中にテレビカメラを見つけ気付いたらしい。
ぴゅーっとパトカーの影に隠れてしまい姿が見えなくなった。
一部始終を見ていた銀時が吹き出していると、受話器から不機嫌な声が聞えてくる。
『笑ってんじゃねぇぇぇ』
きっと顔を真っ赤にしてふてくされてるんだろうなぁと思うと、余計に笑みになってしまう。
「わ、笑ってませんんんん」
『あからさまな嘘をつくんじゃねぇぇ……ちっ……じゃあなっ』
「あ! 多串くん」
このまま機嫌を損ねたまま仕事に戻らせるわけにはいかないと、銀時は優しい声で言ってやった。
「待ってるから怪我なんかしねーでちゃんと来いよ」
『……いつになるか分からねーぞ……』
「うん、いつでもいいよ。美味いもん食いたいんだろ?」
『……分かった……じゃあ』
嬉しいのに素っ気ないような言い方をして、土方はそのまま電話を切ってしまうのだろうと思ったのに、
『……誕生日おめでとう……』
受話器から小さい声でそう聞えたあと、電話は切れた。
きょとんとしながら銀時がテレビに視線を戻すと、土方が真っ赤な顔で戻ってきて近藤に心配されているような様子が映っていた。
カメラを意識してすぐにそっぽを向いてしまったが、土方の姿も声もちゃんと銀時に届いている。
「ああ、もう……超可愛っ」
予定通りにはいかなかったけれど、幸せ萌えな誕生日になった銀時だった。
ハピバ、銀さん!
おわり
設定としてはものごっさありがちですよね。うん、いつもどおり!(笑)
“一緒に居ない”誕生日ネタでした。