原作設定(補完)

□その24
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#236

作成:2016/10/11




「トシィ!すまん!!明日の休み代わってくれ!!」

副長室で山崎が持ってきた書類の説明を受けていた土方のところへ、近藤が駆け込んできてそう叫んだ。

「どうかしたのか?」

「それがなっ!お妙さんが“明日はどうしても近藤さんに来ていただきたいわ”なんて言ってくれたんだよぉぉぉ!!」

「……へぇ……」

あのお妙が常々嫌がっている近藤にそんなことを言うだろうかと怪しんでいると、山崎がこっそりと教えてくれる。

「明日はスマイルの売り上げ締切日なんです」

案の定、良いように利用されているだけだったが、どれだけ嫌がられても痛い目にあっても諦めない近藤の、一途な気持ちは応援してやりたいとも思う。

小さい溜め息をついたあとに了承した。

「…分かった…」

「ありがとぉぉ!!トシぃぃ!!じゃ、早速お妙さんに知らせてくる!」

嬉しそうに笑って近藤がぴゅーっと部屋を出て行くと、山崎が躊躇うように聞いてきた。

「あの……いいんですか?副長も出かける予定だったんじゃ…」

「ん……」

今までは非番といっても自室で書類整理ぐらいしかすることがなかった土方に、外泊という予定が入るようになったのを山崎は知っている。

近藤を応援してやりたいと思ったと同時に、頭に浮かんだ銀髪の後姿。

「……そっちは変更するからいい」

仕事で予定がコロコロ変わる土方をいつも笑って許してくれることに、ついつい甘えてしまう。

山崎が部屋を出て行ったあと、仕事に取り掛かる前に土方は携帯を取り出した。

『はぁい、万事屋銀ちゃんでぇす』

「…俺だ…」

『多串くんっ』

携帯越しでも分かるぐらい嬉しそうな声に、ちくりと胸が痛んだが仕方ない。

「すまねえ、明日の約束ダメになった」

いつもだったら素直に謝る土方を、がっかりしつつも許諾してくれる銀時だったが、今日はすぐに返事がなかった。

『……』

「…万事屋?」

『…あ…うん……分かった』

様子の違う銀時に戸惑いながら声をかけると、ようやくいつもの言葉が返ってくる。

がっかりしているというよりショックを受けているような声に、土方の胸も痛んだ。

「悪い」

『かまわねーよ』

その後の短い会話はいつもどおり笑ってふざけたことを言っていたが、土方には罪悪感が残ってしまった。




翌日、夕方になって近藤が副長室にやってきて、謝罪と意気込みを語って意気揚々と出かけていくのを見送ってから、文机に置いた携帯に目を止め銀時を思い出す。

何故かあのままにしておいてはいけないような気持ちになってしまった。

「……次の予定を早めに入れといてやるか」

交換した近藤の非番は明後日だし、それを伝えておけば少しは喜んでくれるかもしれないと思い、携帯を手に取る。

が、電話に出たのは妙に明るい神楽だった。

『はいっ、万事屋銀ちゃんネ』

「……土方だけど」

『なんだニコ中アルか』

あからさまにガッカリした声に、相変わらず可愛くないなと思いながら問いかける。

「…アイツ、いねーのか?」

『出かけたアル。お前と約束じゃなかったアルか?』

「? そう言ってたのか?」

『言ってなかったけど、どうしても夜は出かけたいからって、昼間にパーチーやったネ』

「パーティー?何の」

『銀ちゃんの誕生日パーチーアル』

「!?」

思いがけず知ることになった銀時の個人情報に、土方は昨日の寂しそうな声の理由を知った。

この歳になると誕生日だなんだと浮かれることもなくなり、それはたぶん銀時も同じだったろうと思う。

たまたま会う約束をした日が“今日”だった。

それに気付いた銀時が一人楽しみにしてしまったというだけ。

それに気付かなかった土方が銀時をがっかりさせてしまったというだけ。



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