原作設定(補完)
□その24
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#235
作成:2016/10/06
パトカーの中で土方は煙草をふかす。
仕事帰りのコンビニの前で路上駐車し、運転手を務めていた隊士に昼飯を買いに行かせているところだった。
携帯を開いては閉じて小さく溜め息をつく。その繰り返しだった。
『電話ぐれぇサラッとしちまえばいいのに』
自分にそう言い聞かせるが、それができないのが自分なのだ。
ガチャッどドアの開く音がして、素早く携帯を懐にしまいながら窓の外を見る。
コンビニのレジ袋の音に隊士が戻ったのだと思い込んでいたが、
「焼きそばパンあったか?」
「……悪ぃ、ソレは買ってねーわ」
返ってきたのは呑気な聞き覚えのある声。
驚いて運転席を見ると銀時がやっぱり呑気な顔でハンドルを握り、エンジンをかけたところだった。
「おいっ!何やってんだてめー」
「ドライブしませんか」
「しませんか、って、勝手に発進させんじゃねぇぇ!」
パトカーを走らせる銀時に、怒鳴りはしたものの手出しはできない。
警察車両で事故りました、なんて恥だからだ。
銀時が楽しそうに運転しているので、土方は溜め息をついて背もたれに寄りかかる。
「運転できたんだな」
「……うん、運転はできるよ」
愛車はスクーターで、車を運転しているところを初めて見たので聞いただけだったが、意味ありげな言い方で答える銀時にすぐに察した。
「……てめー……免許は」
「……持ってるよ……原付の」
「止めろぉぉぉ!!」
土方は素早く車両の前後と道路の様子をチェックした上で、銀時の腕を掴んで止めるように促した。
銀時も無茶をするつもりはなかったので大人しく車を止める。
土方にとっては十分銀時らしからぬ無茶だったが、
「ったく、何してんだ、てめーは」
「だって……車でイチャイチャしたかったんだもん」
なんてことを言われて、即座に銀時が考えそうないやらしいことを想像して焦ってしまう土方だった。
「く、車でって……てめー……」
「はい、あーん」
が、銀時はレジ袋の中からツナマヨのおにぎりを取り出し、土方の口元に差し出した。
「……何してんだ」
「イチャイチャ。はい、あ〜〜ん」
確かに公園なんかでカップルがやっていれば“イチャイチャしてる”ように見えなくもないが、自分はもちろん、銀時だってそんなことをするようなキャラじゃないのは分かっている。
何を企んでいるんだと怪しんだ土方だったが、ついさっきまで考えていた“今日”のことを思い出した。
土方が口を開けてくれないので、
「ちぇ〜、あーんぐらい別に減るもんじゃなし。昼飯ぐらい付き合ってくれてもよくね?」
拗ねるようにそう言いながらも、銀時は銀時なりに気をつかいつつ、ちょっとした我が儘のつもりなのだろう。
その我が儘のおかげで、今年は祭日で休みを取ってやることができず、電話だけでもしたほうがいいかと悩んでいたのに会うことができた。
なので土方も“キャラじゃない”のは諦めた。
「マヨは」
「あ?」
「マヨ」
「ツナマヨですけど」
「足りない」
「……すみません、忘れました」
「しかたねーな」
「持ってんのかよっ」
銀時の手が持っているおにぎりにこんもりとマヨをトッピングすると、そのまま動かない土方。
“待っている”のだと気付いた銀時が嬉しそうに、
「はい、あーん」
とおにぎりを差し出すと、土方は直接それを口に頬張った。
内心は悶絶しそうに恥ずかしいが仕方ない。
『今日ぐらいは聞いてやらぁ』
おかえしに、レジ袋からチラリと見えたショートケーキを、お返しに「あーん」してやろうと思う土方だった。
ハピバ、銀さん!
おわり
銀誕ネタじゃなかったんですが、急遽“誕生日だから”という設定にしてやりました。
相変わらずイチャイチャの定義が幼稚園児並みですみません(笑)