原作設定(補完)

□その24
13ページ/29ページ

#233

作成:2016/09/26




その日の万事屋は気まずい空気に包まれていた。

新八が出勤してきてからずーーーっと、銀時が難しい顔をして考え込んでいるからだ。

神楽と定春はまったく気にしている様子もなかったが、“銀時らしくない”というのはけっこう気持ちが悪い。

仕事がないのはいつものことにしても、甘い物を要求したり、パチンコに出かけようとしたり、それに対して文句を言うのが日課だっただけに新八も落ち着かなかった。

始めは心配していた新八も黙っているうちにどんどんネガティブになっていくもので、今までだって数々のトラブルに巻き込まれているだけに怖くなってきた頃、

「……新八……」

銀時が胸を押さえながらぽつりと名前を呼んだ。

「は、はいっ!?」

「……ヤバイ……どうしよう……」

「何したんですかっ!?」

銀時がこんな風になるぐらいだからとんでもないことをしでかしたのかと真剣に聞いたのに、

「どきがむねむねして苦しいんだ。なにコレ、ヤダコレ」

顔を赤くして恥ずかしそうに答える銀時とは裏腹に、新八は白けてしまう。

「……古いですよ、それ」

「ぷぷぷ。どきがむねむねっ、面白いアル」

ウケている神楽は放っておいて、面倒くさいけれどこのままじゃもっと面倒くさいと話を聞いてやることにした。

銀時がもじもじしながら鬱陶しいぐらいはぐらかすので時間がかかったが、どうやら好きな人が出来たらしい。

「相手は誰なんですか?」

「いきなりそれを聞くか?言えるわけねーだろバカっ、恥ずかしいだろバカっ」

「…………じゃあ、どんな人なんですか?」

「えっとぉ……綺麗で真面目でカッコよくて……」

この期に及んで恥ずかしがる銀時に“やっぱりめんどくさっ”と思いながら新八は一応真面目に考えた。

新八に相談するぐらいである。きっと知っている人だろうと、自分達の周りにいる女性達に銀時の言う条件を当てはめてみた。

「責任感があって強くて、でも素直じゃなくてそんなところも可愛くて…」

薄ら気持ち悪い条件から次々にふるいにかけてかけていって、最後に残ったのは、

『もしかして……月詠さん?』

で、銀時にしては悪くない選択だなと思えた。

「やっぱり無理だよなぁ……俺なんか釣り合わなくね?想うだけ無駄じゃね?」

さっきまでのウキウキとは裏腹に急にしょんぼりしてしまう銀時に、本気で言っているようだと新八も真剣に受け止めた。

それに月詠なら、銀時を少なからず好意を寄せているように見えなくもない、ような気がする。

このままじゃ万事屋の仕事、ついては自分の生活にも影響があるので早急に事を収めなくてはならない。

「そんなことないですよ!銀さんらしくない、きっと上手くいきますって!」

これで上手くいったら、これからは少しは真面目にやってくれるかな、と。

「だからさっさと告白してすっきりして頑張ってお仕事しましょう!」

「ええぇぇぇ……無理、俺アイツの顔見てそんなこと言えそうにねーよぉ」

“気持ち悪いこと言ってんなぁぁ!”と叫びたいのを我慢してたら、

「あ! じゃあ、今からここに呼ぶからぱっつぁんが言ってくれよ」

「えっ、なんで僕がっ!?」

「だって、さっさと解決して仕事して欲しいんだろーが。このまんまじゃ銀さん何にも手につかないしぃ」

面倒くさいと思っていることに感付かれて、よけいに面倒くさいことを言われてしまった。

が、ここは仕方ない。

爛れた恋愛しかしたことがない銀時が、初めて見せるピュアさのために人肌縫いでやることにする新八だった。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ