原作設定(補完)
□その24
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#232
作成:2016/09/23
銀時が団子屋に通うのには理由があった。
もちろん甘味が好きだという設定のせいでもあるが、時々そこに居合わせるヤツに会うため。
物騒な隊服に身を包んで物騒な顔で物騒なことを言うヤツに、会いたくて毎日ここに来ていた。
のに、ここ数日姿を見ない。
仕事で忙しいなら仕方ないが、
「旦那ぁ、今日も暇潰しですかぃ。大変ですねぇ」
そう言って銀時の隣に座って団子を注文する沖田が暇そうなのだから、真選組が忙しいというわけではなさそうだ。
何かあったのかもしれない。
でなければ土方が沖田を一人でぷらぷらさせるわけがないのぐらい知っている。
「……最近副長さん見ないけどどーしたの?」
ド直球で訊ねる銀時に、沖田は団子を美味そうに食べながら答えた。
「俺を信用して見回りを任せてくれるようになったんでさぁ」
「うん、それはないよね」
「大した理由じゃねーんですよ。ただ攘夷志士に怪しげな液体をぶっかけられちまうっていうマヌケをやらかしただけでさぁ」
銀時にさらりとかわされて、更にさらりととんでもないことを沖田は言った。
『怪しげな液体!?沖田くんを放置するほど大変なことになってるんじゃないのぉぉぉぉ!?』
心の中では絶叫し動揺しながらも、銀時は頑張って落ち着いた声を出す。
「へえ、そりゃマヌケだ。外出もできねーなんて、どんなことになってんの?」
「それが、“本心とは裏腹に行動しちまう”という代物みてーで」
「なにそれ」
「分かりやすい症状では、好きな人には嫌いな風に、嫌いな人には好きな風に接してしまうんでさぁ」
「……つまり?」
「近藤さんには怒鳴って当たり散らして、俺には優しくなってやした」
命に係わるような深刻性は無くなったものの、土方にとっては大惨事であるには違いない。
「……そりゃあ気持ち悪いね」
「サブイボもんでさぁ」
好意故に近藤に厳しくなることはあっても、沖田に優しい土方なんて想像もできない。
一番ショックを受けているのはおそらく当人の土方だろう。
「なんで、今は自室に軟禁状態ってなことになってやす」
「ふーん」
とりあえず安心して興味ないような返事が出来たけれど、銀時の胸にはある疑問が湧いていた。
『俺に会ったらどんな反応をするんだろ』
団子屋で待ち伏せしているため時々会うことができるが、いつも眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔をしている。
そして口を開けば憎たらしいことを言い、銀時が応酬するから喧嘩になる。
だから好かれているなんて微塵も感じたことはないけれど、銀時が居ると分かっていても見廻りのコースを変えることはなかった。
嫌いなヤツが居ると分かっていてわざわざ団子屋を通るか?、と思いつつ、逃げたら負けだと思って意地になっているだけか?、とも思う。
つまりは土方の気持ちは皆目見当がつかないでいた。
だけど今なら会えば土方の気持ちを知ることができる。
そう思ったら居ても立ってもいられなくなった。
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