原作設定(補完)
□その24
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新八たちに事情を説明された銀時は、がっくりと項垂れていた。
「またかよ……どうなっての俺の脳」
「リセットボタン押さずに電源切るからアル」
「あれ? 俺、ファミコン?」
不可抗力とはいえ、二度目でもあり、元に戻ったと喜んでいた二人を見るとちょっぴり反省したが、
「……あー……おめーらにも迷惑かけたな……」
「いえ、全然」
きっぱり言われた。
「あ?」
「むしろ助かりました。面倒な仕事も安い仕事も文句言わないでちゃんと行ってくれてましたよ。真面目に働いてくれたって依頼人からも評判良くて」
「毎日“ごはんですよ”が食べられて幸せだったアル」
「パチンコもムダ使いもしてこなかったよね」
本当にまったく困ったことなどなかったような二人に、イラッとしながら嫌味を言ってやった。
「あ、そう……そ、そんなに働いたんなら俺の取り分も残ってるんだろうな」
「ないです」
再度きっぱり言われてしまった。
働いた記憶がなくても、貰えるはずのものが貰えないというのは悲しい。
「なんでだよっ!今までか?今までのこと言って意地悪してんのか?銀さんだって銀さんなりに頑張って……」
「違いますよ。銀さんの分は、銀さんが使っちゃったんです」
「あ? ムダ使いしなかったんだろ、何に……」
「デート代アル」
「…………え?」
「デート代は自分で出せって言ったら頑張って働いてたアル」
当然のように話す神楽だったが、そこに超特大の疑問点があることを聞き流すことはできずに恐る恐る訊ねたら、
「ちょ、ちょっと待って……で、デートって……誰と?」
「マヨラーネ」
とんでもないあだ名が飛び出した。
「…マヨ…………お、多串くんんんん!!? な、なななな、なんでっ」
「大丈夫ですよ。付き合ってるフリをしてもらってるだけですから」
「フリ?」
「記憶がない銀さんが、仕事もない恋人もいない人生なんかつまらないから死ぬって言われて……その場しのぎに机の中を開けたら土方さんの写真があって、それを見た銀さんが勘違い……」
「おいぃぃぃぃ!!何かってに見てんですか、俺の大事なコレクションンンン!!」
新八の説明の途中だったが、銀時は机の引き出しを開けると大量の写真を取り出して、「ひーふーみー…」と数えているところで二人の視線を感じて我に返る。
土方の写真を大事にしてコレクションしている時点で、どういう意味なのか白状したようなものだ。
「…銀さん……その写真、依頼品じゃなかったんですか?」
「う、嘘は言ってないですぅ。最初は確かに依頼だったんだけどね……良い写真は高く売れるもんだから、ちょこーっと追い回して見てるうちにね……そのぅ……」
モジモジしている銀時に、二人は呆れた顔をする。どうやらマジらしい。
「……どうりで沖田さんの写真がないわけですね……」
「銀ちゃん……スカートアル」
「ストーカーね」
「ゴリラと一緒しないでくんない。俺は別に付き合いたいとか思ってたわけじゃねーし、デートなんて…………ハッ! だから、なんで多串くんが俺とデートしてんですかっ」
「土方さんに事情を説明したら、記憶が戻るまで協力してくれるって言ったんですよ」
「毎日デートしてたアル」
「毎日ぃぃぃぃ!? ちくしょうぉぉぉ、俺めぇぇぇ!!!」
自分自身に嫉妬するという器用なことをして絶叫する銀時に、新八たちはやれやれという顔で立ち上がる。
「じゃあ、僕たちは銀さんの記憶が戻ったことみんなに知らせてきますんで、銀さんはちゃんと土方さんに連絡してくださいね」
「連絡?」
「今日も会う約束あるんでしょ? 記憶が戻ったんだからもう必要ないですし。あ、ちゃんとお礼も言ってくださいよ」
そうは言われてもいまいち納得ができない。
土方に何かしてもらったのは全部記憶がない銀時であって、記憶が戻った自分には何もないのだ。むしろ損しかしていない気がする。
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