原作設定(補完)

□その23
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数分後、

「いいぞ」

ドアから顔をだし手招きすると、新八と神楽がぱーっと顔を輝かせて中に入って行く。

一体どんな交渉をしたのか気になった銀時が、ドキドキしながら聞いてみた。

「おめー、何したんだよ。まさか……」

『俺は真選組副長の土方だ。食べ放題って銘打ってるのに本当に好きなだけ食ったら出禁ってどういうことだコラァ。営業停止にしてやろうか?あぁ!?』

なんて、権力を肩に脅迫したんじゃないかと想像してしまったが、

「するかっ。…お前らが10人前食うなら10人分の金を払えばいいだけだろ」

「金かよ」

「いや、この場合、金で済ますのが妥当だろうが」

高給取りの考え方に庶民……どちらかと言えば貧しいほうの庶民としては勘に触るが、新八と神楽があんなに嬉しそうで腹いっぱい食べられるなら文句の言いようもない。

それから四人で食事をしたが、三人の食欲に土方は呆然とするだけだった。

山盛りに持ってきても次々に無くなっていく料理たちに、店に同情すらしてしまう。

そうしているうちに、土方は見てしまった。

食べ物をポケットに仕舞ったり、袋に仕舞ったりしてる新八と神楽を。

「……何やってんだよ」

「定春にお土産アル。お腹空かせて待ってるネ」

「冷凍してあとでチンして食べるんです」

子供ながらにペットや後日の食事まで考えていることに、なんて生活させてんだと土方が銀時を見ると、さっと視線を外されてしまった。

それでも、今は警察官として安定した生活をしていても、昔はそれなりに苦労したこともある十四郎だったので、

「警官としてルール違反は見逃せねーよ。後でスーパー寄ってやるから、それはお前らが食え」

そう言ってやった。

「マジアルか!?酢昆布も欲しいネ!……5……3箱!!」

「米もいいですか!?一粒もなくてっ」

どんだけ控えめなんだと泣けてきそうになるが、同意して二人には食事に集中させた。




腹を満たした後、スーパーに寄って万事屋の冷蔵庫も満たしてやる。

土方は、遠慮する子供たちに好きなだけ買わせ、遠慮しない銀時を叱り飛ばしたり。

かぶき町に戻ってきたときは夕方近くになっていて、

「じゃあ僕たち先に帰ります」

そう言って新八が銀時と土方が持っていた荷物も受け取った。

子供二人で持つには多すぎる量だったが、片方が怪力娘なのでなんとかなりそうだ。

「いやアル、もっと…」

「いいからっ。じゃあ、土方さん、ご馳走様でした」

怪力娘のほうは渋ったが、新八は行儀良く土方に礼を言う。

それを見ていた神楽も、さすがにちゃんとしないといけないと思ったのか、モジモジしながら、

「ご馳走様アル」

なんて可愛らしい面を見せてくれたりして、土方は嬉しそうに笑った。

二人がそそくさと荷物を持って帰って行ったのは、銀時と土方に気を使ったからだろう。

二人きりになって銀時がすまなそうに言った。

「……悪りーな、ずいぶん金使わせちまって」

「たまには連れ子の機嫌とっとかねーと会いにくいからな」

ふっと笑った土方があまりにも可愛いので、銀時は「今すぐ嫁に来いぃぃぃ」と叫びたくなったが、その前に土方が言う。

「…いいよな、お前らのとこ。俺は真選組のヤツラも家族だと思ってるけど、お前らと一緒にいると……子供の頃を思い出したりするよ」

それは土方にとっては懐かしくて温かい思い出なのだろう。

だから付き合ってるのがバレた後、適応力ありすぎの新八と神楽があっさりそれを受け入れたら、今日みたいにまとめて世話をやいてくれることが多くなった。

時折銀時のほうが邪魔扱いされてるんじゃないかと思えるほどで、ついつい二人きりで会うのを優先したくなってしまう。

だがこんな風に嬉しそうな顔をされたのでは、銀時としては妥協してやるしかないようだ。

「……そりゃあうちの子らは土方のことを家族だと思ってるからな」

「……そうか」

「だーかーらっ、お父さんのことも大事にしてください、お願いしますっ」

拗ねたようにそう言われ、土方は笑って答えた。

「どんな風に大事にして欲しいんだよ」

「……そりゃあ、たとえば……」

その時、土方の胸元から携帯の着信音が流れる。

“その意味”は1つしかなくて、少し見つめあっただけで二人とも諦めた。




「たでーま」

万事屋に帰ってきた銀時を、新八が驚いた様子で迎える。

「銀さん、もう帰ってきたんですか」

「仕事だってよ」

よくあることなので諦めが早い銀時だったが、新八のほうはちょっと気にしている様子だった。

「……じゃあ、僕たち邪魔しただけでしたね」

せっかく二人きりで会えるはずだったのに、空腹のあまりデートに同行してしまったのだから。

申し訳なさそうな顔をする新八と神楽に、さきほどの土方の笑みを思い出し、

「………いや、楽しかったみてーだからいいよ」

そう言って笑ってやると、二人も嬉しそうに笑った。


 おわり



久し振りの家族イチャイチャでした。
一緒になってワイワイやってくれると微笑ましいなぁ、と。
以前書いた話に出た“食べ放題なのに10人前”のくだりは、この話があってからの設定だったんです(笑)
四人の話はまた思いついたら書きたい、可愛いから……土方が(笑)

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