原作設定(補完)

□その23
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#222

作成:2016/08/11




パチンコで大負けした銀時は、しょんぼしながら真選組屯所に向かって歩いていた。

偶然土方に会えて、たまたま暇で、もしかして機嫌が良かったらご飯ぐらい奢ってくれるかもしれない、と考えてのことだったが、本心はしばらく会えていなくて寂しいだけだったりする。

屯所に近付くにつれてウキウキしだした銀時だったが、金属がぶつかり合う鈍い音が聞えてきて肌がピリッと震えた。

普段なら野次馬をする気にすらならないが、場所が視線組みに近すぎる。

小走りに音のするほうへ近付いて行ったとき、

「黙れぇぇ!幕府の犬め!!貴様らには……」

「おい、口喧嘩しに来たのか?とっととかかってこいコラァ!!」

その怒鳴り声に、銀時は木刀を腰から抜き取り全力で走ると……笑顔で彼らの前に飛び出した。

「土方く〜ん、会えて良かったぉぉ」

「!? なっ……」

笑ったまま土方に近付きながら、彼に向かって振り上げられていた刀を払い除けた。

「銀さん、パチンコに負けちゃってぇ。晩ご飯奢ってくださいっ!」

土方が巻き込まれている諍い事など見えていないかのような銀時に、攘夷志士はもちろん土方まで呆気に取られてしまったが、我に返って声を荒げる。

「貴様いったい……」

「てめぇぇぇ!何言ってやがんだっ!!」

「ええぇぇ、ご飯ぐらい奢ってくれてもいいじゃん」

「そっちじゃねぇぇ!!」

無視して会話を続ける二人に振り払われた刀を慌てて拾い上げ、凝りもせず向かってくるの志士を木刀であしらいながら銀時は粘った。

「新八たちの給料まで使い込んじゃったからおうちに帰れないですぅぅ。お願いだからご飯……」

「それどころじゃねぇだろっ!!」

「おまっ、銀さん昼から何も食ってねーんだから、それどころですぅ」

「だから、そっちじゃねぇぇぇ!!!」

土方は次々に向かってくる志士をなぎ払うのに必死なのに、惚けたことを抜かしながらひょいひょいとヤツラを翻弄する銀時に腹が立つ。

「飯はこれが片付いてからだっ!!」

そう言われ、銀時はにいっと笑うとようやく“やる気”になったようだ。

「ガッテン!」

土方と背中合わせに攘夷志士たちに相対すると、銀時は急所を狙って的確に地面に沈めていく。

荒削りだが華麗と言えなくもないその様子に、土方は舌打ちをして自分も向かってくる志士に集中しだした。

“質より量”とでもいわんばかりわらわらと出て来るヤツラに、二人は“気付く”のが遅れた。

建物の陰に隠れていた男が、ヤツラの切り札だったのだろう。

が、男は“侍”らしく、こっそり狙い打ちなんて卑怯な真似をせず、

「土方十四郎っ!天誅ぅぅぅぅぅ!!」

そう高らかに声を上げて飛び出してきた。

手の空いてなかった土方よりも先に銀時が反応する。

男が振り上げた刀を受け止めようと木刀を構えたのに、その手に刀はなく、代わりのスプレー缶から真っ白な気体が発射された。

「…あ!?」

「わははははっ、恥をかけ、ひじか………あれ?」

笑い声を上げた男の目の前に立っていたのは、謎の気体を全身に浴びた銀時だった。




「……というわけで……すまん」

万事屋に銀時を連れて帰ってきた土方は、事情を説明したあと申し訳なさそうに詫びた。

それを聞いた新八と神楽は肩を震わせ……笑い出す。

「あはははははははっ!!ぎ、銀さんっ!?」

「ぎゃははははははっ!!無様アル!」

爆笑の二人に指差され銀時は青筋を立てて怒るが、猫耳、猫口、猫ひげ、猫尻尾、猫手のオプション付きでは迫力がない。

しかも、

「にゃぁぁあああ!(笑い事じゃねぇぇええ!!)」

猫声で何を言っているのかも分からず、二人はさらに笑い転げた。

正直、何を言っても「にゃあ!」としか喋れない銀時とその姿に土方も吹き出しそうになるが、自分を庇ってこんな情けない目にあっているのだからそれは我慢した。


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