原作設定(補完)
□その23
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正解が出なくてイラッとする銀時に、
「てめーが、“気にすんな。こんなの酔っ払った勢いの冗談みてーなんもんだ”、って言うからだろーがっ!」
そう叫んで土方は一目散に逃げ出した。
これを言ったら、きっと自分の気持ちを銀時に気付かれて、もうあんな風に一緒に酒を飲めないと分かっていたからだ。
一方銀時は、言われた内容に疑問符を浮かべていて、逃げる土方を見送ってしまったが、
「……あ?……なんで、そこを怒んだよ……冗談じゃねーほうが良いって………………!!!」
遅ればせながらようやく理解し、急いで土方を追いかける。
幸い駆け足は銀時のほうが早かったのだが、名前を呼んでも土方は足を止めないし、服を掴んで強引に止まらせようにも相手が“着物”だけに“あは〜ん”な感じにコントみたいな裸になってしまう気がした。
ので、仕方なく両腕を背中から回して抱き締めるようにして捕まえた。
「土方っ!」
「離せぇぇ!!」
諦めずにジタジタと逃げようとする土方の顔が真っ赤で、さきほど理解したことを恐る恐る聞いてみる。
「何、さっきの。お前……俺のこと好きなのか?」
「…っ…」
直球で訊ねてこられると思ってなかったので、土方は殊更真っ赤になって黙ってしまう。
それを見た銀時は、肩にこつんと額を乗せて深い溜め息をついた。
「……なんだよ……言えよ、そういうことは早く……心にもないこと言った俺がバカみてーだろーが」
「?」
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会えば喧嘩ばかりだった土方と、いつのまにか毎週同じ曜日の同じ時間に飲むようになった。
大勢で楽しく飲むほうが好きな銀時だったのに、土方が隣に居て静かに飲むのも悪い気がしなかった。
それが何故なのかを考えていたら、ほろ酔いで気分が良かったせいか、
「俺さぁ、こんなに気が合う奴は江戸に出てきて初めてだから……仲良くできて嬉しいんですよコノヤロー」
思わず赤面したくなるような恥ずかしいことを口にしてしまった。
だからバカにするだろうと思った土方が、
「…別に仲良くねーだろ」
と答えながらも、満更じゃないような顔をした土方に嬉しくなった。
そんな気分に重い意味が付加されたのは、仕事で遅くなってしまったあの日。
2時間も過ぎてしまったからもう居ないだろうと思いながらも店に向かってしまった銀時は、いつもの席に居た土方が、銀時の姿を見てホッとしたような小さな笑みを浮かべたのを見た。
『可愛っ!!…………あ? 可愛い? 可愛いってなんだ』
自分にツッコミを入れながら、すぐに笑みを消してしまった土方の隣に座る。
「副長さん、今日はずいぶんゆっくりじゃね?」
「…うるせ。今日は飲みてー気分だったんだよ」
その割にはあまり飲んでいるように見えない。
『待っててくれたのかな』
そう思ったら“可愛い”と思った理由と合わせ技で、“好きだ”と気付いた。
嬉しくて胸がドキドキして、もっと一緒に居たくて。
気付いたはいいけれどいきなり告白なんてこともできず、嫌われたら元も子もないといろいろ我慢してきた。
……のが逆効果で、酔った勢いでそれが暴走してしまった。
抵抗されたら止めようと思ってたのに、土方から抱き締められて止められなくなった。
やっぱり土方も自分のことが好きだったんだと嬉しかったのに、翌朝、目が覚めた土方が“信じられない”という顔をしてるから、誤魔化すためにあんなことを言ったのに。
+++
仕切り直していつもの店でいつものように飲み始めた二人。
その二人の間にふわんとした空気が流れていることに気付く人は居ないだろう。
気恥ずかしくていつもより仏頂面の土方に、嬉しくていつもよりだらしない顔をした銀時がコソコソと訊ねた。
「お前、いつ俺が好きだって思ったんだ?」
「………てめーがすげー遅れた日……来てくれたのが嬉しくて……」
「…………」
「……なんだよ……」
「気ぃ合いすぎだろ、俺ら」
にぃっと笑った銀時に、銀時が自分を好きになったのもその日だと察した土方が悔しそうに顔を歪めるも、真っ赤すぎて逆に、
『ものごっさ可愛っっ!!!』
なんて銀時に思われているのを、自分では知る由もなかった。
おわり
昔考えた話が形になるとちょっぴり嬉しい。
でも気付いたんですが……読むのも書くのも面倒だと文章を簡素にしてきましたが、
簡素すぎて“いきなり恋に落ちる二人”みたいになってますよね(笑)
いい年した大人なんだから、ちゃんといろいろ考えていると思うんですが……特に土方は相手が銀さんだし……
でも書くのが面倒なので、ウブい二人でこれからもやっていこうと思います。
「いきなりだな!」とツッコミを入れながら読んでやってください(笑)