原作設定(補完)

□その23
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いつもの曜日のいつもの時間、土方はいつもとは違う店に居た。

銀時を無視したままだったので外出せずにおこうと思ったのだが、いつもの時間になっても外出する気配の無い土方に、

「副長……今日はお出かけにならないんですか?」

「ねーよ」

「えええぇぇぇ!!?」

山崎はオーバーなぐらい驚いてくれた。

その驚き方には裏があるようで、土方はムッとしながら睨みつけたら、

「んだぁ? 悪ぃのかよ」

「い、いえ、そんなことは……」

「悪いに決まってまさぁ」

言いよどむ山崎の変わりに、どこからともなく現れた沖田が答えた。

「土方さんが毎週この時間に出かけるってんで、隊士たちのリフレッシュタイムになってたんでさぁ。心の洗濯してーんで、とっとと出かけてくだせぇ、土方コノヤロー」

“鬼の居ぬ間に洗濯”と言いたかったのだろう。

隊士たちにそんな風に思われていたなんて、と傷心の土方の傷口をさらに容赦なく傷つけられ、

「……出かけてくる……」

そう呟いてフラフラと屯所を出てきてしまったのだ。

いつもの店には行きたくない。でも隊士たちの洗濯のためにゆっくりしてこないといけない。

『アイツと顔を合わせないためにはかぶき町以外の店に行くべきだが、アイツが俺を探しているなら当然その可能性を考えてかぶき町以外の店に探しにくるはずだから、俺はその裏をかいてかぶき町の目立つ大きな居酒屋でひっそり飲むことにします。あれ?作文?』

なんて考えて辿り着いた店で、久し振りに一人で飲む酒は実に味気ない。

『……アイツとくだらねーこと話しながら飲むのが楽しかったのにな……』

このまま一人で飲んでも気分が落ち込んでいくだけそうなので、とっとと店を出て他のことで時間を潰そうと考えたとき、隣に人の気配がして顔を上げた。

そこに立っていたのは息をきらした銀時で、

「み〜つ〜け〜たぁぁ!!」

「なっ……」

一瞬驚いたが、銀時から逃げ隠れするなんて無理なのだ。

「なんでここが……」

「ああ!? “俺と顔を合わせねーためにはかぶき町以外の店に行くべきだけど、俺なら当然その可能性を考えてかぶき町以外の店に探しにくるだろうから、その裏をかいてかぶき町の目立つ大きな居酒屋でひっそり飲むことにします。あれ?作文?”とか考えてたんだろうが!お見通しですよコノヤロー!!」

裏をかこうか、裏の裏をかこうが、同じことを考える銀時だからこそ気が合うと思ったのだから。

舌打ちしてそっぽを向いた土方に、銀時も苛立ったような声をあげる。

「お前ねぇ、ちゃんと謝ってんのにそこまで無視するこたぁねーだろーが」

「……」

やっぱり無視されてしまったが、ここで怯んでいては探し回った意味がない。

改めてきっちり謝罪しようとした銀時だったが、

「……悪かったって。酔った勢いであんなところに連れ込んでヤッ……」

場所が場所だけに、土方の手でその口をバーンと押さえられてしまった。

土方は急いで会計を済ませると、銀時を引っ張って外へでた。

もちろん話を聞くためではなく、そのまま屯所のほうへ向かって歩き出す土方を、銀時が追いかけてくる。

「ひじかたく〜ん」

自分が悪いと反省はしてもムカつくものはムカつくし、それでも顔を見れて名前を呼ばれると嬉しいとも思ってしまう。

土方が振り返ってくれないので、銀時は仕方なくその背中に向かって謝ることにした。

「許してくれるまで何度でも言います。ホントにごめん、悪かった、すみませんでしたっ」

軽い口調ながら、銀時なりに精一杯の謝罪をしているのだということは分かった。

だけど的は外れているのだ。

何度も謝る銀時に、ようやく足を止めた土方が言った。

「……俺が……なんで怒ってるか知らねーくせに……」

「……そりゃあ、男にヤラれちゃったから……」

「違う」

「あ?…じゃあ酔っ払ってるところ連れ込んだから?」

「違う」

「??…………相手が俺だから?」

「違うっ」

「じゃあなんだよっ!」


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