原作設定(補完)
□その23
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屯所に戻りきょろきょろしている土方の背後から、憎たらしい声が聞えてきた。
「土方さ〜ん、聞きやしたぜ」
振り返ると沖田がしたり顔でそう言ってきたので、
『やっぱり!』
と思ったら、
「近藤さんから。今度フグ食いに行くそうじゃねぇですか。俺も連れてけ、土方コノヤロー」
唇を尖らせながら的外れなことを言われた。
なんだ、そのことか……と小さく溜め息をつく。
「………ガキには10年早ぇ」
「なんでもマヨ味にしちまう味覚バカには言われたくねーでさぁ」
「なんだとっ!!」
土方が拳を振り上げると同時に、沖田はぴゅーっとすごい逃げ足で居なくなってしまった。
どうやら賭けの相手は沖田じゃないようだが、
『総悟じゃねぇのか……あとはあいつとカラミのある奴と言えば…』
他に誰か居ないか考えていたとき、再度背後から声をかけられる。
「副長〜、聞きましたよ」
振り返ったそこには山崎が立っていた。
『こいつか!?』
「局長から。フグ食いにいくそうですね、いいなぁ」
沖田と同じオチにガックリ項垂れた土方に、山崎が不思議そうな顔をした。
『…近藤さん…みんなにしゃべってんじゃねぇか』
数日たっても誰も銀時とのことをからかってくる者は居なかったが、土方の疑いは晴れなかった。
連絡をくれると言った銀時から音沙汰がなかったからだ。
『普通ホントに嬉しかったらすぐ連絡するもんじゃねーのか……やっぱり嘘だったから……』
悶々としながら市中見回りをしていたせいで、一緒に出てきたはずの沖田が居なくなっているのにも気付けない土方。
一人で歩いていた土方に“待望”の声がかけられた。
「土方さん、聞きましたよ。銀さんと付き合うことになったそうですね」
嬉しそうにそう言ったのは新八だった。
まさかの相手に土方は動揺する。
子供相手に喧嘩腰になるのもどうかと思うが、あの銀時とずっと一緒にいるせいでかなり感化されているだろうと、軽いジャブから聞いてみた。
「……アイツ、どうしてる?」
「え? ああ、仕事頑張ってますよ。土方さんをデートに誘う金が必要だって」
誤魔化す答えとしては100点だ。有り得そうで、しかも土方をきゅんとさせることができる。
が、素直にきゅんとしてる場合じゃないのでズバリと聞いた。
「……万事屋となんか賭けてねーか?」
「!!!」
明らかに“ギクッ”とした表情と動揺を見せる新八に今度こそ、
『やっぱりか!』
と、怒りと悲しみが湧いてくる土方だったが、新八は慌てて頭を下げた。
「す、すいませんっ! だって、銀さんなかなか言おうとしないから、つい」
想像と違う言葉に土方がきょとんとしている中、新八は一切合財を説明する。
「銀さん、ずっと土方さんが好きなのに言い出せないでいるんで、告白してOKもらえたらパフェ食べ放題って賭けてみたんですよ。でもOKもらえたのが嬉しくて賭けのことは忘れてるみたいなんで、銀さんには黙っててください」
最後には嬉しそうな顔になっていた新八に、土方のもやもやはようやく晴れた。
『なんだ……あの告白はマジだったのか』
告白がいきなりだったのは、素直になれなかった銀時がこの賭けをきっかけに勢いを付けた、ということのようだ。
甘い物に釣られたのもそれを忘れているのも、銀時らしくて土方に笑みが洩れる。
それを見た新八が、
「銀さんのこと、よろしくお願いします」
なんてことを改まって言いだす。
土方が銀時の話で笑ってくれたのが嬉しかったらしい。
「……おう」
子供に丁寧にそんなことを言われると照れくさいが、土方は頷いて伝言を頼のむのだった。
その日の夜、ファミレスで待つ土方のところへ、銀時が大急ぎでやってきた。
新八に頼んだのはデートのための待ち合わせの時間と場所。
「好きな物、好きなだけ頼め」
「まじでかっ」
メニューのデザートのページを食い入るように見つめる銀時を、土方がじーっと見つめていたら気付かれて少し照れた顔をされた。
「何?」
「……お前んとこのメガネに、銀さんをよろしく、って言われた」
「ああ?オカンか、あいつは」
銀時は眉間にシワを寄せて嫌そうな顔をするが、それはきっと照れ隠しだったろう。
「……ガキに何心配されてんだ」
「あいつの優しさだからね。やればできる子だからね、あのメガネは」
まあそのおかげで銀時とこうしていることができると思えば、土方もあのメガネに感謝していた。
もちろん、銀時を本気で疑ったことは内緒だ。
お詫びとして新八の代わりに“パフェ食べ放題”をご馳走して、ようやく幸せを噛み締める土方だった。
おわり
…………書き忘れたエピソードがある気がする……。
仕事中は余計なことを考えるには最適なんだけど、忘れちゃうのが難点です(笑)
いつもありがちなオチですみません。
二人が幸せならそれだけで満足なので、同じオチになっても全然気にしません!(笑)