原作設定(補完)

□その23
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日付を超える少し前、土方は副長室へ向かって足早に歩いた。

動機はなんであれ、部下が気を利かせてくれたおかげで毎日銀時に会うことができて、気分は落ち着いていた。

『なんでだろうな……あいつと居るともやもやが無くなるのは……あの緊張感がない顔と頭のせいかな……』

失礼なことを考えながら副長室の襖を開ける。

昨晩確認したとき今日も来れると言っていたのだが、部屋には誰も居なかった。

途端に胸がきゅーっと締め付けられるようにがっかりした土方だったが、

「あれ、土方くんお仕事終わったの? お疲れ」

そう声をかけられて振り返ると、濡れた手を着物で拭きながらまぬけ面の銀時が廊下に立っていた。

どうやら厠にでも行っていたらしく、文句を言うよりも嬉しい気持ちのほうが勝って、銀時を中に入れるとぎゅーっと抱き付いてやった。

依頼を受けてから気付いたが、土方は疲れていれば疲れているほどくっ付きたくなるらしく、銀時は小さく笑って抱き締め返してやる。

ある程度の充電が済んだら立っているのは疲れるので、畳に座ると銀時は土方を後ろから抱っこし、土方は銀時に寄りかかる。

目を瞑って銀時の体温を感じていると、

「ちゃんと寝てんの?」

心配そうな声で聞かれ、

「寝てる。睡眠時間削るといざというときに正常な判断ができねーからな」

と答えたら笑われた。

「仕事のためじゃなくてさ、疲れを取るために寝なさいよ」

「……今はそんな余裕はねー」

仕事以外の生活時間をできるだけ切り詰めて、残りをすべて仕事に回すような毎日。

隊士全員で分担できれば多少の余裕はできるのだが、“確実”を求めるとどうしても自分でやったほうが良いのだ。

土方が妥協できないのが分かっていて、近藤は銀時の屯所出入りを許したんだと分かっていた。

それに甘えて、こうして銀時に触れている。

銀時にぎゅーっとされているのに満足しながらも思うことがあった。

「情けねーな…他のやつらに示しがつかねー」

隊士たちには局中法度を含め厳しいことばかり言ってきたのに、自分は好きなヤツに抱き締めてもらい安らいでいるなんて。

落ち込んだような声で呟いた土方に、

「…ぷふーっ」

背後で銀時は吹き出した。

真面目は話をしたのにと振り返って睨んでやったら、

「土方くん、ガス抜きヘタだからなぁ」

そう言いながら、銀時はしょうがねーなという笑みを浮かべている。

「他の奴らは好きなことして上手いことガス抜きしてるよ。おめーは銀さんしか好きなもんないもんなぁ」

銀時に会うまで、隊士たちに“仕事が趣味だ”と言われるぐらいやることがなかった。

それでも良いと思っていたしそれで満足できていたのに、銀時に会って好きなヤツと一緒に居る楽しさを知った。

だから銀時の言うことは間違っていないけれど、決め付けられるのはムカつくので、

「……うぬぼれんな」

そう言ってそっぽを向いてやったが、それは逆に銀時のツボだったらしい。

「おまっ、可愛いぞコノヤロォォォ

いつもだったら“可愛いってなんだぁぁぁ!!”とブッ飛ばしてやるのだが、後ろから手と足でぎゅうぎゅうに押さえ込まれて動けないため、仕方ないから……と今日は大人しくしてやる土方だった。




あれから二週間後、銀時は万事屋でぐったりとしていた。

出来るだけ毎日屯所へ行き、思う存分抱き締めているとはいえ、“それだけ”というのは精神的にかなりキツイ。

始終ムラムラしてしまうのだが、仕事で忙しい土方を癒すための依頼であって、疲れさせるようなことはできないのだ。

場所が屯所であることもあって、ずーーーっと我慢して我慢して我慢して……

「……あぁぁぁ……ちゅーとぎゅー以外のこともしてーっての。みんな可愛いあの子が悪いと思います。あれ?作文?」

なんて独り言でムラムラを誤魔化していたら、机の上の電話が鳴った。

「はい、万事屋……」

「俺だ」

「土方くん。どうした?」

「ガキ共いんのか?」

「今はいねーよ」

「いつ戻る」

「お妙と一緒だから……女の買い物は長げーし……」

「じゃあまだ帰ってこねーな」

そう言うと同時に、玄関の扉がガラッと開いて、ズカズカと土方が上がりこんできた。

どうやら玄関の前で電話していたらしい。

携帯を閉じながら、きょとんとしている銀時の元まで来ると、

「1時間しかねーんだ、ヤルぞ」

発情中のエロい顔でそう言って、銀時にぎゅーっと抱き付いた。

「えぇぇぇ!? ちょっ……今はマズイんじゃ……」

「うるせぇ。屯所だから我慢してただけだ。毎日あんなんしてて治まるかっ」

土方も同じことを考えていたことに、銀時は嬉しそうに笑う。

「もうしょうがねーなぁ。ご期待に添えるように頑張っちゃおうかなぁ」

「このあとはまたしばらくオアズケだからな。手ぇ抜くなよ」

「ガッテン!」



 おわり



漫画にしたら面白かったと思う……話の5割は二人が抱き合ってることになるから(笑)
たまにはね、ちゃんとイチャイチャさせてやりたいなぁ、と思っての話。
うちの土方も基本はツンデレ(弱)なんですが、甘えっ子ってのも可愛いよね。

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