原作設定(補完)

□その23
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#225

作成:2016/08/18




相変わらず暇な万事屋の午後、やることもなくダラダラしていたら乱暴な足音が近づいてきた。

そして呼び鈴も鳴らさず乱暴に部屋に入ってくる。

一瞬お登勢の家賃取り立てかと思ったが、開いたままの扉から姿を現したのは土方。

「…ひ……」

名前を呼ぶ間もなく、土方は片方のソファで一人座っていた銀時に近付いてくると、ぎゅーーーーーっと抱き付いた。

向かいに座る新八と神楽が呆気に取られる中、ぎゅうぎゅうと抱き締めたりすりすりしたりする土方に、驚きながらも銀時も答えて背中に手を回し撫でてやる。

大人が二人、イチャイチャしているのを見て子供たちは呆れた顔で見ないフリを決め込んだ。

真選組鬼の副長のこんな行動に驚きはしても、疑問に思わないのは二人が付き合っているからだった。

それでも子供たちの前で堂々といちゃつくことは今までなかったので、珍しいと言えば珍しい。

それから30分ほど銀時にくっついていた土方は、満足げな表情で帰って行った。

「……あの……なんだったんですか……」

「充電じゃね?」




という話を、山崎は新八から聞いて複雑な顔で納得していた。

仕事がずっと忙しくてイライラしていたはずの土方が、ちょっと外出した後、急に機嫌良くなった。

限界を超えておかしくなってしまったのかと思っていたが、銀時に会うことですっきりできたのだろう。

理由が分かったところで山崎にはひらめたいことがあった。

「……依頼?」

近藤に相談し承諾を得た山崎は、改めて万事屋を訪れる。

真選組からの依頼ということで銀時はあからさまに嫌そうな顔をしたが、

「時間が空いたときでかまわないんで、屯所に来て副長の側にいてあげてください」

という話を聞いて顔色が変わる。

「どういうこと?」

「副長……忙しいんです。ものすごーーーく忙しいんです。たぶんこれからは屯所を抜け出す時間もないぐらい忙しくなるんです」

「……だから?」

「このままじゃ俺の身が危な……じゃなく、隊士たちに厳しくなるし、空気も悪くなるしで、屯所内がギスギスしてしまうんですよ」

「鬼の副長なんて呼ばれてるんだから、慣れてるんじゃね?」

「そこをなんとか旦那のお力で、鎮静剤になっていただきたいと……」

深々と頭を下げる山崎に、新八は“どんだけ怖いんだろう”と逆に興味が湧いてしまう。

銀時と付き合う前に、町中で会ってはギーギーといがみあってる時や仕事中に見る土方は、怖そうな人だと思っていた。

が、付き合ってからの土方は、お土産を買ってきてくれたり銀時の前で笑っていたりするので、すっかり“鬼の副長”のイメージは無くなっていたのだ。

山崎にお願いされても銀時は気の乗らないような顔をしていたが、こんな依頼を受けないわけがない。

土方の顔が見れる上に依頼料まで貰えるのだから。




「……ちっ……あいつら余計なことを……」

急に屯所に来た理由を銀時から聞いた土方は、舌打ちをして眉間にシワを寄せた。

もちろん依頼主の不利にならないように聞いたことを丸く話しておいたが、土方はちゃんと分かっているだろう。

副長室で他に誰もいないため、畳の上に座った銀時にぎゅーっと抱きつきながら、ちょっと嬉しそうに笑った。



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